学問に取り組む時、その動機やモチベーションは人それぞれ。得意なもの、好きなこと、興味のあることをワクワクしながら学ぶ人もいれば、不得意な分野や縁のなかったことに飛び込んで行く人もいます。苦手な分野である経済を敢えて学ぶことにした経済学部国際経済学科の酒巻菜央さんは、まさに後者と言えるでしょう。そして、その苦手な分野を学ぶことで、酒巻さんの未来が幕を開けたのです。

苦手だからこそ選んだ金融ゼミ

私は英語が好きで、高校では外国語学科に通っていました。大学進学にあたり、国際経済学科を志望したのは、国際的なことを学びたいという思いと、一番苦手でわからない分野が経済だったことから。将来、どんな道に進んでも、経済の知識は必要になるはず。だからこそ、社会人になる前に勉強しておきたいと思ったのです

国際経済学科では1年生からゼミナールは必修ですが、2年生で選択ゼミを履修する際には、「金融」について研究する益田安良教授のゼミを選びました。私は大学に入学し、経済学を学ぶなかで、「金融」について理解を深めていないまま社会人になっていいのだろうかと、危機感を感じていました。そこで、経済学の中でも、一番難しく苦手に感じていた「金融」の分野を専門とするゼミナールに入り、研究しようと考えたのです。大学では自ら求めれば、学びを深めることができるチャンスがあります。だからこそ、そのチャンスを逃してはいけないと、あえて苦手な分野へ飛び込むことにしました。

2年次には、金融の基礎知識を学びました。このゼミでは自分が気になる社会問題を取り上げて研究発表しますが、私は通商白書、経済財政白書を材料にテーマを設定し、プレゼンテーションを行いました。ゼミでの学びを重ねて行くうちに、私は今の日本の社会情勢や経済により強い関心を持つようになっていきました。ゼミを通じてプレゼンテーションを何度も経験し、発表能力や論理的思考力なども身に付きました。

3年次からは、卒論に向けて学びを深めていきました。私が選んだテーマは、「企業年金の変革課題~確定拠出年金利用促進の為の規制緩和が必要~」です。卒業論文では、年金をもっと充実させるためにどんな方策があるかを探り、まとめました。

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得意な英語で磨いた討論する能力れない環境で身についた粘り強さ

サークル活動は、英会話研究会のE.S.S.(English Speaking Society)に入会しました。高校時代に英語のディベート大会に出場した時の指導者からE.S.S.を勧められており、東洋大学にもE.S.S.があったので、迷わず入会したのです。E.S.S.の活動は、スピーチ、ディスカッション、ディベート、カンバセーションの4セクションに分かれています。私はディスカッションのセクションで活動し、社会問題などを英語で討論しています。他の大学と一緒に活動することが多く、毎週のように討論会があるほか、毎年3月には大会も行われます。

討論会や大会に出るためには、事前の準備が重要です。「どんなことを」「どのエビデンスをもとに」「どういったロジックで話すか」を日本語で考えてから、英語で話せるようにしておくのです。そして当日は、相手の意見を聞きながら意見を述べ、紙に書きながらプレゼンテーションをします。

年に一度行われる大会では、参加者のうち上位20人が「ランカー」と呼ばれます。このランカーに入ることが私の念願だったのですが、3年次の大会ではついにランカー入りを実現することができました。

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ゼミとE.S.S.で磨いた力で切り拓いた道

ゼミナールとE.S.S.を通じて身に付いたプレゼンテーション能力や論理的思考力は、就職活動にとても役立ちました。就職活動時のグループディスカッションでは論理的思考力が求められ、面接ではプレゼンでの話し方などの指導を受けていたことが活かされたと思います。

就職活動では大学で金融を学んだことが生かされ、金融業界の数社から内定をいただくことができました。入学当初に自分が苦手だと思っていた「金融」の分野で、自分を生かすことになったのです。信託銀行を就職先として選んだのは、業務内容の一つに生前贈与の取り扱いがあったため。私はおじいちゃん子なので、祖父世代と私たち世代をつなぐお手伝いができればと考えています。人のお金を預かるのは責任の重い仕事ですが、10年後には高齢者と次世代をつなぐプロフェッショナルになっていたい。それが私の今の目標です。

酒巻 菜央さん経済学部 国際経済学科 4年

  • 内定先:三菱UFJ信託銀行株式会社
  • 所属ゼミナール:益田安良ゼミナール
  • 埼玉県立蕨高等学校出身

  • 掲載内容は、取材当時のものです