文学部日本文学文化学科の森田佳奈さんは早い時点から、日本を代表する子供服ブランドの店で働きたいという夢を抱いていました。アルバイトで接客の奥深さ、おもてなしの精神の大切さを実感し、その思いはさらに大きなものに。そんな森田さんの就職活動を支えたのは、ゼミで学んできた「比較研究」の技法でした。第一志望の企業の内定獲得には、学業にしっかり取り組んできたという確固たる裏付けがありました。

源氏物語から景観文化研究へ

両親がアパレルの仕事をしていたため、幼い頃からファッションと関わる機会が多く、とりわけ、子ども服の店での買い物が楽しかったという思い出が残っています。子どもも好きな一方で、ファッションアドバイザーへの憧れもあり、子ども服業界へ就職したいという希望はかなり早くから抱いていました。第一志望の会社もはっきりしていたので、日本文学文化学科で学んできた「比較研究」のスキルを生かして同業他社と比較することで、なぜ業界トップなのか、その会社の強みは何か、ウェブサイトやパンフレットには書かれていない会社の色を読み取っていきました。

比較研究は入学当初からしたかった分野ではありません。日本文学文化学科に進んだのは、以前から好きだった『源氏物語』を学ぶためでした。ところが、自分の求めていた答えに思いがけず1年生の時点でたどり着いてしまい、残り3年間は、何を勉強しようかと考えた時に比較文学文化と出会ったのです。日本人でありながら日本のことを知らないということを恥ずかしいと感じていたので、日本についてさまざまな角度から学べる絶好の機会だと考えました。実際、外国人の目線で日本を見るという試みもあり、比較することで新たに物事が見えてくる面白さに夢中になりました。

ゼミでは景観文化研究を専門に、エッフェル塔と東京スカイツリーを比較しました。自分が東京スカイツリーのそばに住んでいることもあり、塔ができたことによって地域にどんな変化をもたらしたのかを知りたかったのです。結果としては、塔はただのモニュメントではなく、街を活性化させるひとつの役割でもあることが理解でき、研究を通じて充実感を味わいました。

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日本一になったアルバイト先で接客について考える

全国展開しているアイスクリームショップでアルバイトをした経験も、自分にとっては大きな財産となりました。店舗では「クリーン&スマイルコンテスト」があり、予告なく本社から審査員が訪れ、店の清潔度や接客をチェックするのです。抜き打ちなので、優秀なアルバイトだけをその時間帯に集めるわけにはいきません。どの店も同じ条件でそのように審査された結果、私がアルバイトをしていた店が全国1位になったのです。意識が高い人たちと一緒に働くことで、どんなことがお客様から感謝されるのかを考えることがよくありました。100円で買えるアイスではなく、少し値段の高いアイスクリームを食べにわざわざ来店してもらえるということは、お客様にとって、その日はいいことがあったのかもしれないし、特別な日なのかもしれない。そうしたお客様に対して、自分たちには何ができるだろうと、仲間たちとよく話し合ったものです。

アイスクリームショップにしてもアパレル業界にしても、人と接する仕事です。私は「ものを売る」というよりも「人と接する」、さらに突き詰めると「日本人らしいホスピタリティをもってお客様に接する」ことに大きな喜びを感じています。しかも、それが大好きな子ども服のブランドを通じてできるなら、それほど幸せなことはありません。

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念願の子ども服ブランドで1年ずつ階段を上がっていきたい

これまでを振り返ると、自分に自信が持てないために「どうせうまくいかないから」と挑戦しないこともあり、後から「あの時動けていれば」と悔やむこともよくありました。しかし、いざ思いきって挑戦してみると、たとえ失敗しても、自分にとってマイナスになることはひとつもありませんでした。内定先の会社も、ずっと憧れていたものの、自らアクションを起こさなければ、現在の結果は得られなかったでしょう。今はむしろ、失敗して得たものが自分を成長させてくれるのではないかと思っています。

内定先は、海外でも人気を博している日本を代表するアパレルブランドです。日本人ならではのおもてなしの心や振る舞いを生かした接客をしていきたいと考えています。1年目はまず知識を深め、店の雰囲気に慣れると同時に、社風に合った人間に成長していきたいと思います。2~3年目で中堅クラスになって、自分らしさを発揮したファッションアドバイザーとなり、自分のファンを多く作っていきたいというキャリアプランを今から描いています。そして5~10年目には、ブランドチーフという立場でブランド運営に関わり、任せてもられることを目指して、これからがんばっていきたいと思います。

森田 佳奈さん文学部 日本文学文化学科 4年

  • 内定先:株式会社ミキハウス
  • 所属ゼミナール:有澤晶子ゼミナール
  • 私立二松學舍大学附属高等学校出身

  • 掲載内容は、取材当時のものです