来日して日本語の勉強をしつつ、インターンシップを経験したり、日本各地を旅行したりしているうちに、陳フーリンさんが思い描くようになった未来。それは、航空会社も抱えた旅行会社を設立するという壮大なものでした。大きな目標に向かって国際地域学部国際観光学科で充実した4年間を過ごした陳さんは、さらに専門知識を深めるべく、卒業後は大学院に進学します。

自分の目で日本を見たい、知りたい

日本のアニメや音楽が好きだったこと、日本に移住した幼なじみが、夏休みに帰国するたびに日本の話を聞かせてくれたことなどから、中国とは違う技術や個性のある「日本」という国に興味を持ちました。また、学校で日本について学ぶうちに、日中関係を批判的に見るだけでなく、自分の目で日本という国を知ってみたいと考えるようになっていきました。周囲の人が自国の話だけを鵜呑みにして、一方的な視点で日本のことを語るのにも違和感があったのです。

日本と中国の間には長い歴史があり、今も問題を抱えています。だからこそ、中国から一面的に日本を見るのではなく、直接日本に行って文化や習慣に触れたいと思い、留学を決意しました。

来日したばかりの頃は、言葉もわからず買い物もろくにできない状態。日本語を話すのは日本語学校の先生とだけ。心細い思いもしましたが、ホテルでのインターンシップや日本各地への旅行を通じて、次第に観光業界に興味を抱くようになりました。そして、いずれは観光の仕事がしたい。それならば自分の旅行会社を設立して観光に関わりたい、という思いが湧いたのです。

東洋大学は観光学の専門領域が充実しているだけでなく、自分の希望に合わせて他学部、他学科の授業を選択できる点にも惹かれました。ここでなら多様な分野から観光業界について学べると思い、東洋大学へ進学することにしました。

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言葉や文化の違いを少しずつ克服

入学して最初の1年はまだわからない日本語も多く、授業についていくのが大変でした。常に電子辞書を持ち歩き、初めて聞く単語はその場ですぐ調べるようにしていました。アルバイト先でも聞き慣れない言葉があったらとりあえずメモして、帰ってから必ず調べることを徹底した結果、少しずつ、しかし確実に、日本語能力が高まっていきました。

特に聞く力、話す力は日本人と会話するようになってからは一気に伸び、学科の友人も「この4年間で本当に日本語がうまくなったね」と言ってくれます。日本語学校では習わないけれど日常会話にはよく出てくるような「生きた日本語」は、日本に来たからこそ学べたもの。留学という選択は正しかったと思います。

ゼミでは毎年学内の中国語スピーチコンテストを運営していて、私は2年連続でリーダーを務めました。その際に日本人学生と留学生との交流サポートも企画した結果、「楽しかった、また参加したい」という声をもらえ、初めて人に喜んでもらう楽しさを実感しました。また、この経験から協調性と問題を解決する力が培われたのではと思います。

文化や習慣の違いで中国人が誤解されそうな時に、日本人との間を取り持つこともあります。中国人はものをストレートに言うし言い方もきついので、日本人からは「怒っている」と思われがちです。そこで日本人に対しては「あの人は全然怒ってないよ」、中国人には「そういう話し方は怒っていると誤解されるので気をつけて」と伝えるのです。私も来日したばかりの頃は、日本人の遠回りな話しぶりをもどかしく思うこともありました。しかしその一方で、人を傷つけないように気遣う日本人ならではの優しさや思いやりの心も知りました。これも日本に来て留学したからこそ、理解できたことです。

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夢の実現に向けて、まずは大学院へ

就職活動は観光業界を考える一方、東日本大震災で物流が滞り、物不足になった状況を経験したことから、物流にも興味を持っていました。同時に、卒論のテーマにしていたLCCについてもっと学びたいという思いも強く、迷いながら就職活動を続けていました。そして、最終的に選んだ道は大学院への進学です。大学院では、市場分析や研究・講義などを通じて、積極的かつ幅広く知識を吸収し、より自分の能力を磨いていきたいと考えています。また、国際観光を学ぶには英語が不可欠。英語力をさらに高めるため、夏休みにアメリカの語学学校へ短期留学する予定です。

私が設立を目指すのは航空会社を保有する国際旅行会社です。旅行会社がチャーター便で旅行者を運ぶことで収益を得るスタイルは、日本ではなじみがありませんが、海外では一般的です。大学院卒業後はまず、日本で働いてスキルを身につけ、この大きな最終目標に向かっていきたいと思います。

留学生活を充実させるためには、何といっても語学が欠かせません。日本語が聞き取れないことが多かった時期は、日本人の友達と思うようにコミュニケーションを取ることができませんでした。同じことを何度も聞き返さないといけないことが、ストレスになることもありました。余計なストレスを抱えないためにも、日本語の勉強はしっかりすることが大切です。また、相手の気持ちがよくわからないと感じた時は、その思いを素直に伝えることで、相手も心を開いてくれます。そこに国籍の違いは関係ありません。お互いが気持ちをオープンにすることは、異なる文化を持つ人同士がよい関係を作るためにとても重要だと思います。

陳 フーリンさん国際地域学部 国際観光学科4年

  • 所属ゼミナール:梁春香ゼミナール
  • 出身国:中国
  • 横浜国際教育学院出身

  • 掲載内容は、取材当時のものです