土木職の公務員として地域の安全を守ってきた父親の背中を見て育ったという、理工学部都市環境デザイン学科の五月女友也さん。自宅から2時間かけて通学した大学4年間を通して、地元への愛着もますます深めていったようです。目指すのは「共に働く人々や県民と手を取り合って作るより良い街」。大学のグループワーク授業や、公務員試験を“団体戦”で乗り切った経験もまた、五月女さんの志す公務員のあり方の礎となっていました。

通学電車の窓から地元を眺めて気づいたこと

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父が栃木県庁に勤めていたため、幼い頃からその仕事ぶりを見て育ちました。公務員というと手堅さばかりがクローズアップされますが、父は土木関連の職員。大雨ともなれば土日も夜中も関係なく駆り出されます。びしょ濡れになって帰ってくる父を見ては「なんて大変な仕事なんだろう」と思ったこともしばしば。それでも地域の安全を縁の下で支える父の姿は、子どもの目にも頼もしく映ったものです。

生まれ育った地元への愛着もまた、公務員を志した理由でした。都市環境デザイン学科が掲げる「“人工物”と“自然”が共生した快適な都市システム」というテーマは、都心からほど近い上に、豊かな自然にも恵まれた栃木県の理想の未来像とも重なります。

栃木県の中心部はベッドタウンとして発展していますが、通勤時間帯の道路は大渋滞。その一方で、車通りの多くない道にはところどころ陥落が見られます。高架下の道路に水が貯まり、自動車が閉じ込められた事故に遭遇したこともありました。地元から大学までは片道2時間。電車の窓から見える風景から高校時代には気づかなかった発見も多く、短くない通学時間も振り返ってみれば「地元のより良い未来」をイメージする有意義な時間だったと思っています。

グループワークで見えた理想の公務員のあり方

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都市環境デザイン学科では「まちづくり」の基盤となる構造力学、水理学、土質学などの知識を、座学だけでなく実習も通して学びます。なかでも印象深いのが、「材料力学」の授業でコンクリートをこねた体験です。コンクリートの強度を高めるために土砂や水の配合を工夫して混ぜるのですが、これがなかなか骨の折れる作業で翌日には筋肉痛になってしまいました。

将来は恐らく、自らの手でコンクリートをこねることはないと思います。しかし、現場に携わったときに、私自身が材料について理解していなければ、的確な指示を出すことはできないでしょう。土木職の公務員に採用が決まった今、さまざまな材料に触れた経験は本当に貴重だったと感じています。

何より、現場で汗を流す人たちと思いを同じくしなければ、“いい仕事”もできないと思うのです。実験はグループで行うことが多く、協力し合うことでより良い結果が導き出されます。「まちづくり」とは、壮大な規模のグループワーク。仲間たちと実験やディスカッションを重ねてきた経験は、「共に働く人々と仕事への思いを共有することの大切さ」も養ってくれました。

就職活動もまちづくりも“団体戦”で臨むもの

公務員試験は難関だと聞いていたため、一時は学科での学びを生かせるゼネコンやコンサルタントなどとの併願を考えたこともありました。しかし、公務員試験の筆記の出題科目は民間企業に比べてはるかに広く、むしろ集中して臨まないと突破は厳しいと判断。3年生の春には目標を公務員一本に絞りました。

もともと自分は期限ギリギリになってからやっと重い腰をあげるタイプで、大学での学びに慣れていなかった時期は、レポートや課題の提出に苦しんだものです。大学での学びの進め方は、高校とは比べ物にならないほど計画性が重要だということを幾度となく痛感しました。しかし、それは結果的に、私が苦手としていた「コツコツと物事に取り組むこと」の最良のトレーニングにもなっていました。公務員試験を突破できたのも、3年生の初めから試験日を逆算した対策スケジュールを立て、1日の勉強量などをしっかり守ってきたおかげだと思っています。

大学の公務員試験対策講座で知り合った仲間たちも、長期にわたる試験対策の心強い存在でした。講座以外の時間にも互いに面接練習をしたり、協力して情報収集をしたりと、ライバルでありながら助け合えるとてもいい仲間に出会えたと思っています。就職活動は“個人戦”のようで、実際に取り組んでみると“団体戦”の側面も大きいものです。

公務員の務めは、街をより良くすること。そして、そのために大切なのは、住民と協力し合える関係を築くことだと思っています。住民が一丸となってつくり上げる、快適な生活と豊かな自然が共存した暮らしやすい街。そんな栃木県の理想の未来に向けて、ますます身を引き締めて臨みます。

五月女 友也さん理工学部 都市環境デザイン学科

  • 内定先:栃木県
  • 栃木県立小山高等学校出身

  • 掲載内容は、取材当時のものです