幼い頃から絵を描いたり、ピアノを弾いたりと、想像力を働かせて表現することが好きだったという大村祐太さんは、「デザイン」という言葉に惹かれて東洋大学のライフデザイン学部人間環境デザイン学科に入学しました。想像していた以上に奥深いデザインの世界に触れ、日々、驚きつつもワクワクしながら学んでいるそうです。授業で学んだこと一つひとつを消化し、自分らしさを表現したスタイルでアウトプットすることを目指しています。

誰かの役に立つものをつくりたい

学部学科名に含まれる「デザイン」という言葉が、自分を表現することを意味するのではないかと思い、人間環境デザイン学科を志望しました。この学科では、3年生から「空間デザインコース」「生活環境デザインコース」「プロダクトデザインコース」のいずれかを選択することになっており、1,2年生のうちはまず、デザインに関するあらゆる分野を幅広く学びます。入学当初は、高校時代に好きだった美術や技術と似たような授業を受けるのかなと思っていたので、今まで触れたことのなかった「建築」や「福祉」に関する内容の授業には戸惑うこともありました。

そうして学ぶうちに、多角的な視点からデザインを考えることが必要なのだと実感したのは、2年生の時。祖父母が病気になり、自分で思うように身体を動かせなくなってしまったことで、「人の役に立つものをつくりたい」と強く感じるようになったのです。そうした視点を持ってあらためて授業を見つめてみると、「ユニバーサルデザイン」や「バリアフリー」など、生活におけるデザインを学んでみたいと目的意識が明確になり、3年生からは「生活環境デザインコース」を選択することに決めました。そして、車椅子や生活支援などに触れた取り組みを行う水村容子ゼミナールに入室し、より深く学びたいと考えました。

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ゼミ活動で町のユニバーサルデザインを実感

3年生になってからは、専門科目の履修やゼミナールを通じて、デザインについてより専門的に深く学ぶようになりました。印象に残っているのは、水村ゼミで浦和市の町歩きをしたことです。「さいたま市バリアフリー専門部会」に参加し、身体障がい、知的障がいのある市民の方と一緒に道路や高架下、駅の中などを歩き、バリアフリーの環境整備の実態を調査しました。自分でも実際に車椅子に乗ってみて、道の狭さやでこぼこ具合、段差などを体感したところ、「利用者のニーズとずれているのではないか」と感じるところもありました。車椅子の人にとってはちょうどいい高さの柵であっても、目の不自由な人にとっては気づきにくいものになるなど、これまではユニバーサルデザインだと思っていたものが、立場によってそうとも限らないことを発見。細かいところまで追求してデザインすることが大切だと感じました。

こうして調査した結果から課題解決のための方策を考え、発表することで、ようやく自分たちの学びは一つの形となります。ただ体験して終わりにせず、アウトプットすることの大切さを、ゼミでの学びを通じて、実感しました。

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課題制作で身につけたアウトプットする力

アウトプットという点では、1年生の夏休みの課題「100枚スケッチ」が忘れられません。身近な静物や自分の手など、思いつくものを何でもひたすらスケッチしていくのは、まさに“質より量”をこなす作業。当時は大変な労力が必要でしたが、自分のアイデアの引き出しを増やしていくことが狙いだったんだなと納得できますし、アウトプットする力も身につきました。

また、プロダクトデザインの授業では、強化ダンボールを使ってグループで椅子を製作するという課題に取り組みました。高齢者にも小さな子どもにも、そしてどういう時間帯でも使えるように、背もたれも肘掛けもついてリクライニングも可能に、と6名の仲間と工夫し、協力しあって実際に椅子を製作。さらには、印象的にアピールできるようにと動画撮影までしたことで、最終プレゼンでは「銀賞」を獲得できたのです。試行錯誤しながらも、メンバーで話し合ってまとめたアイデアを盛り込んで、一つの形にすることができた喜びは何物にも代えがたい経験でした。

大学生活を通じて学び続けてきた「デザイン」の知識や技術を生かして、誰かのためになるような仕事をしたい。それが今の私の描く将来像です。

大村 祐太さんライフデザイン学部 人間環境デザイン学科 3年

  • 所属ゼミナール:水村容子ゼミナール
  • 東京都立千早高等学校出身

  • 掲載内容は、取材当時のものです