東洋大学経営学部では、毎年冬に、学生が主体となって「研究発表大会」を開催しています。ゼミごとにチームを組み、日頃の研究の成果を発表し合い、活発に意見を交わします。他のゼミではどのような研究をしているのかを知ることも、目的の一つ。学生が切磋琢磨する、“学び合い”の場となっています。

経営学的な視点から現代社会を探る

48回目を迎える「研究発表大会」が2013年12月14日、白山キャンパスで開かれ、経営学部2、3年生による134ものチームが参加しました。「ゆるキャラの未来〜くまもんの新たな可能性〜」「若者のクルマ離れに対するマーケティング」「NISA貯蓄から投資」「社内の英語公用語化は企業の成長につながるのか」など、研究テーマは実にさまざま。経営学的な視点から、現代社会を深く探ります。

大会への参加にあたり、各チームは事前に発表内容や専門用語を解説した用語集を提出します。この日のためにどのチームも連日遅くまで残って研究を深め、ゼミの担当教官から指導を受けながら準備を重ねてきました。ついに発表本番を迎え、学生たちは緊張した様子ながらも、どんな発表が聞けるのだろうと楽しみにしていました。

熱気に包まれた開会式が終わると、5チームずつ27のグループに分かれ、発表に移ります。持ち時間は、質疑応答も含めて、1チーム40分間。資料はパワーポイントにまとめ、教室のスクリーンに映し出しながら発表していきます。各グループには、4年生による「議長団」がつき、司会進行やタイムキーピングの役を務めます。さらに、議長団はそれぞれの発表に講評し、グループごとに最優秀賞を選びます。大会の企画・運営からジャッジまで、すべてを学生が主体となって行う、まさに大学ならではの取り組みです。

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個性が光る発表、活発な質疑応答

取材したグループ19では、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)やスマートフォンのアプリケーションに関するテーマを中心に、5つのチームが研究成果を披露しました。FacebookやLINE、mixi、twitterなど身近なSNSを題材に取り上げ、その経営戦略やユーザー数増加の要因、商品のブランディング効果などについて調べ、考察した結果を発表します。発表に勢いのあるチーム、研究内容を丁寧に解説するチーム、資料がわかりやすく聞き手を魅了するチームなど、それぞれの個性が光ります。自ら開発したアプリについての発表では、他のチームの学生に実際にアプリを使ってもらい、会場に一体感が生まれるシーンもありました。

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発表後の質疑応答では、他チームから次々と質問や意見、感想が述べられ、発表チームは真剣な表情で応じます。特に議長団の観点は鋭く、研究内容に加えて、データの提示方法や参考文献の扱い方から、資料のまとめ方、発表態度まで、あらゆる面での指摘や助言がありました。

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最後のまとめとして、議長団リーダーの早福 研さん(経営学部マーケティング学科4年・新潟県立新潟商業高等学校出身)は、「質疑応答が活発で感心した。SNSやアプリの業界は変化が激しいので、その点に留意しつつ、今後もさらに深く追究してほしい」と述べました。

また、「子どもの教育とコミュニケーションを推進するアプリ“イコールコール”の提案」と題し、子どもたちが協力しながら学べるアプリケーションの開発についての発表を終えて、野中Aチームの田染 優香さん(経営学科3年・東洋大学附属姫路高等学校出身)は、「他のゼミの学生からのコメントは、とても新鮮で刺激的でした。企画・開発に留まっており、経営学的な観点からの研究に至っていないと、厳しい指摘も受けました。これらを真摯に受け止め、さらに研究を深めていきたいと思います」と感想を述べました。

学問の面白さを体感する

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本大会は、事前の準備から当日の運営まで、経営学部の学生組織「第I部経営学会」の事務局が主体となって進めています。事務局長の能登 布久子さん(マーケティング学科3年・東京都立大泉高等学校出身)は、大会の意義について、「学科もゼミも横断した大会なので、さまざまな観点からの発表や意見を聞くことができ、たくさんの新しい発見があることです」と話します。

研究発表大会は、ゴールではありません。大会での発表後、参加チームは研究内容を論文にまとめて「本稿」として提出しなければなりません。そして、事務局スタッフはすべてのチームから提出された本稿をデジタルデータにまとめ、参加チームへ配布するのです。

研究発表大会に向け、テーマを設定し、調べ、考察し、まとめ、資料を作成する。そして、他のゼミの学生の前で研究内容を発表し、さまざまな意見や指摘を受ける。さらに、すべてを総括して、論文にまとめる。この一連の活動を通して、学生は「研究する」とはどういうことなのかを身をもって学び、学問の面白さを肌で感じます。そして、学生を大きく成長させるこの経験が、4年間の学びの集大成である卒業論文へとつながっていくのです。

  • 掲載内容は、取材当時のものです