就職活動を終えて、来年は教育業界へ羽ばたく山田遥さん。残り1年の大学生活は「研究とフィールドワークを思う存分やりたい」と語る。生物の不思議を追いかけた先に行き着いたのは、環境を守ることの大切さ。子どもを育む道を選んだのも、幼い頃から魅せられていた生物たちが息づく自然を未来につなげてほしいという思いからだった。

生き物の不思議に魅せられて

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幼い頃から虫や植物が大好きで、図鑑が愛読書でした。生物の世界はワクワクするような不思議でいっぱい。本を読めばわかることもあるけれど、専門的に学んで、もっとたくさんの不思議に出会いたい。そんな思いから、生命科学部の応用生物学科に進みました。

「応用」とついているだけに、この学科は生物の知識や研究を人の生活に生かすことがテーマ。4年生になって配属された研究室では、「アオコ」と水処理の関係について研究しています。

「アオコ」というのは汚染水に発生しやすい藻の一種のこと。浄水場などで増殖してフィルターを詰まらせてしまったり、中には肝臓ガンの原因となる毒まで発生させてしまったりする悪質なものもいるほどです。

アオコは化学薬品で除去することもできますが、そうすると周りの生態系に影響を与えてしまいます。そこで私たちは、アオコを食べて水をキレイにしてくれるバクテリアの研究に取り組んでいます。

アオコ問題はすでに研究が進んでいる分野ですが、まだ解明されていないことも多く、大学生活最後の1年間も、生物の不思議と向き合いながらワクワクと過ごせそうです。

生活レベルから見直す環境問題

環境に関心を持つようになると、生活の面でもいろいろと変化があります。たとえば、夏に欠かせない消臭スプレー。最近は、銀の消臭効果をうたったものも増えていますが、銀の粒子って実は環境にとってあまりよくないものなんですよ。そのため、私はなるべく銀の含まれていないものを選ぶようになりました。

アオコの大量発生も生活排水が原因となり、生活の便利さを追求すると、結果的に人間を苦しめていることって多いと気づかされます。

こうして生物の不思議に触れるたびに、人間はやはり自然にはかなわない、という思いが強くなりました。だからこそ、環境は大切に守っていかなければいけないと思うのです。

「人間の知恵」と「自然の力」を上手に組み合わせれば、もっといい社会が実現できるはず。そんな理想を持っている人なら、この学科での学びはきっととても充実すると思いますよ。

小さな科学者をたくさん育てたい

就職活動も終わり、卒業後は教育業界で働くことが決まりました。自分が幼い頃に感じた生物の不思議にワクワクする気持ちを、一人でも多くの子どもたちに伝えたい。そしてその子どもたちの中から、未来の生物学者が巣立ってくれることが、私の夢。教育という側面から、日本の科学の進歩に貢献したいと考えています。

私もそうだったように、理科を好きになると環境にも興味を持つようになるものです。全員が理系に進まなくても、生活レベルで環境について考えられるような心を育みたいですね。環境問題は、終わることのない、人間がこれからもずっと向き合っていかなければいけないテーマなのですから。

山田遥さん生命科学部 応用生物科学科 4年

  • 所属研究室:システム分子生態学研究室(清水和哉研究室)
  • 埼玉県・私立春日部共栄高等学校出身

  • 掲載内容は、取材当時のものです