高校の現代文の先生に影響され、文学の魅力に引き込まれたという日本文学文化学科の熊崎徹典さん。毎月5冊は本を読むことを目標に、時間さえあれば本を読んでいる毎日だ。作品について「問い」を見つけ、先生や仲間と意見交換するという学びに初めは戸惑いを感じながらも、いまでは文学を通じて考える力や表現する力が身についたそうだ。

本はただ読めばよいのではない

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岐阜県出身の僕は、東京志向がありました。そして、文学作品やアニメ作品に興味があり、好きなことについてもっと深く学んでみたいという気持ちから、文学部を志望していました。志望校選びのなかで出会った東洋大学は、創設者である井上円了の考え方や、哲学や日本文学などを学べる落ち着いた環境が自分には合うように感じて、受験を決めたのです。

いざ、文学部での学びが始まると、ただ文学が好きで読むのと、文学を学ぶということは違うとわかり、最初は戸惑いを感じました。作品を読み、自分はどう感じたのか、他の学生はどう感じたのか。それを話し合うなかで、自分の読み方が浅いことに気づかされたものです。本がそこにあればいい、本を読んでさえいればいいという感覚ではいけないのだと感じました。それからは、作品のことや、作品が書かれた時代背景や社会情勢など、いろいろな事柄を調べて、自分なりの意見として発言できるように努力するようになりました。一つの作品について意見交換をするという活動は、今でも大変刺激を受けます。

また、自分の意見を論文に書いたり、ゼミナールでの発表のレジュメを作ったりという「書く」ことも慣れるまでは難しく大変でしたが、先生の論文を参考にしながら、論文の書き方というものを理解し、最近ではだいぶ書く力もついたように感じています。

文学好きにはたまらない恵まれた環境

私が日本文学文化学科をめざしたのは、高校生のときの現代文の授業がきっかけでした。枠にとらわれない自由な発想で教えてくださる先生の指導法に影響され、いろいろな文学作品に触れてみたいという気持ちが強くなったのです。

高校生のころまでは、太宰治など自分が好きな作家、有名な小説家の作品ばかりを読んでいましたが、大学生になり、これまで読んだこともない作家や、評論文に触れる機会も増え、読む本の幅がずいぶん広くなりました。

本を読むことにまとまった時間を割けるのも、大学生のうちだと思い、自分で毎月5冊は単行本を読もうと目標を立てていますが、書籍代で1カ月に1万円使ってしまうこともしばしば。私は1年生のころから、日本学生支援機構の奨学金をいただいていますが、そのほとんどを書籍代にしている時期もありました。

授業の空き時間や通学時間、休日など、時間さえあれば、本を読んでばかりの毎日です。白山キャンパスは本の街・神保町にも近く、新刊から古本まで、いろいろな専門書が手に入ります。時間があれば神保町へ行って、本を探すことができるのも、文学好きな私にはたまらない環境ですね。

国語好きな生徒を育てていきたい

今、所属している山本亮介先生のゼミナールでは、芥川龍之介や森鴎外などの重厚な作品を研究します。しかし、ゼミナールや講義ではそういった文学作品だけでなく、アニメ作品やテレビ番組、音楽などの身近な作品も学びの対象となっています。ただ鑑賞するだけでなく、作品に関する意見交換をしたり、論文を書いたりすることで、自ら「問い」を見つけ、それについて考え、相手に伝えるという力が身についてきました。

高校の現代文の先生に影響を受けたように、私も母校で国語科の教師になることをめざしています。近々、教育実習に行くことになっているので、今はそれが楽しみです。山本先生のもとで学んだことを生かし、生徒たちが国語を好きになってもらえるような指導ができる先生になれたらと思います。

熊崎徹典さん文学部 日本文学文化学科 4年

  • 所属ゼミナール:山本亮介ゼミナール
  • 岐阜県・私立高山西高等学校出身

  • 掲載内容は、取材当時のものです