「人はどのような状況でどのような行動をするのか」を、理論と実験で学んでいく社会心理学科。「心理学という名前がついていたからこの学科を選んだ」という追杉麻菜美さんはいま、就職活動の真っ最中だ。社会心理学を学び「自分の行動が腑に落ちた」という追杉さんは、自己をどう分析し、どんな夢を抱いて将来の道を決めようとしているのだろうか。

社会現象のメカニズムを知る

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社会心理学を学んでいると言うと、よく「人の心を読めるようになるんですか?」と聞かれますが、答えはノーです。社会心理学を学ぶと、他人のことより自分のことがわかるようになります。

そう言う私も、最初は「人の心がわかったら面白いな」と思っていました。心理テストが大好きで、「心理学」という名前だけでこの学科を選んだようなものです。

社会心理学は、社会で起きる現象のメカニズムを知る学問です。たとえば「綱引き」。1人で引くより50人で引けばパワーも50倍!と思いますよね。でも、実際はそうなりません。

50人で引くときの1人あたりの努力量は、1人で引くときよりも圧倒的に小さくなります。これは意図的にせよ無意識にせよ「誰かがやってくれる」「自分1人ががんばってもムダだ」という心理が働くからなんですね。

こうした現象を「社会的手抜き」と呼びます。大勢の会議で意見が出にくいのも、選挙の投票率が100%にならないのも、そんな心理が影響していると考えると「なるほど!」と思いませんか?そうした「言われてみれば!」と思うようなことが、社会心理学ではきちんと定義付けされているんですね。

腑に落ちることの多い学問

社会心理学を学んだ上で自分の行動を振り返ると、「あ?!そうだったんだ!」と腑に落ちることが多くあります。

私は昔からプライドが高く、また規則を守ろうとする意識も高い人間でした。学校で「これを持ってきなさい」と言われたのにあっさり忘れ、気軽に他人に借りようとする人が許せないタイプだったのです。それがなぜなのかと考えたとき、「社会的望ましさ」という用語に行き当たりました。

これは「人は自然と、他人から見て望ましい行動をとってしまう」という現象を表したものです。つまり自分を良く見せようという傾向ですね。この傾向が強い人は、社会的に受け入れられている行動をとりやすいのです。

秩序を乱されることが嫌いで、しかもプライドの高い私は、まさにこの傾向が強いのだと、社会心理学を学んだことによって理解することができました。

私の笑顔でみんなを元気に

私は今、人から「ありがとう」と言われる仕事に就きたいと考え、就職活動に励んでいます。めざしているのは接客業。私の笑顔で人を元気づけてあげられたらステキだなと思います。

社会心理学科で学んだことは、接客に活かせることばかりです。人は、いきなり自分の意見を否定されると不快になりますよね。それはみんな経験として知っていることですが、学問としてあらためて人間の行動の法則性を学ぶことで、人とのコミュニケーションを円滑にすることが可能です。

以前は「私の話を聞いて!」と発信する一方だった私ですが、最近よく人から相談されるようになり、聞き役として重宝がられるようになりました。これも社会心理学を学んだ成果と言えます。

ちなみに、おもしろおかしい心理テストは根拠のないことばかりです。社会心理学科で学ぶと、そうした社会のウソも見えてきますよ。

追杉麻菜美さん社会学部 社会心理学科 4年

  • 所属ゼミナール:堀毛一也ゼミナール
  • 東京都立竹早高等学校出身

  • 掲載内容は、取材当時のものです