3・11の大震災をきっかけに、「自分にできることは何か」と考えた人も多いだろう。再生可能エネルギーの可能性に挑んでいる上松和樹さんもその一人だ。出身地である風光明媚な観光の町で、ほのかに芽生えた環境への意識。そして大学という奥深い学びの場を経験した今、その視線は世界へと向けられるようになった。

これから注目すべき「小水力発電」

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海と山に囲まれた自然豊かな観光地に生まれ育ったこともあって、環境には以前から興味がありました。一方で、地図を眺めるのも好きだったので、高校時代には「道路や橋など、自分の手掛けた仕事が地図に記されたらいいな」と考えたこともあります。

現在、所属している研究室は「再生可能エネルギー」などをテーマにしていますが、もしも将来、発電所の設置などに関われたら、二つの夢が同時にかなうことになりますね。

3・11の大震災以降、再生可能エネルギーへの注目が高まっています。なかでも僕が今注目しているのは「小水力発電」と呼ばれるシステムです。これは農業用水路など、水の落差が小さいところでも発電できる技術なのです。

主な水力発電はダムですが、「小水力発電」はダムと違い、周囲の生態系への影響もなく、農業や上下水道などに使われている水力を応用できるので一石二鳥と言われています。もちろん「小水力」だけで日本の電力をまかなうのは難しいと思います。でも、複数の再生可能エネルギーをうまく組み合わせれば、きっと何かできるはず。卒業後は大学院に進みますが、引き続きこの課題に取り組んでいくつもりです。

水がもたらす豊かで快適な暮らし

理工学部のキャンパスがある川越は、東京のベッドタウンらしい繁華街もあれば、江戸の町並みが保存された蔵町、そして少し離れれば自然豊かなエリアもある広大な地方都市です。地下水も豊富で、戦後しばらくは深井戸で水をまかなっていたと聞きます。

演習の一環として、市内の水インフラについて調査をしたことがあります。中心街はまさに都会という感じなので、水源の河川からどのように水道を引いているのか興味がありました。調査では、川越市役所のみなさまに、いろいろとお世話になりました。

僕自身も川越市に3年間住んでいますが、暮らしやすくていい町だと思います。水に恵まれていると、都市環境もよくなるのだということが、川越市を例にとってみてもわかります。

小水力発電も含めて、「水」が人の生活にもたらす影響については、これからもっと深く追求していくつもりです。

基本は人と環境を大切にすること

将来はやはり環境に携わる仕事──それも人の暮らしの基盤を支える職種として、公務員になりたいと考えています。

環境と共生した都市づくりは、日本だけでなく世界規模で取り組むテーマです。そのため、英語力をつけようと、イングリッシュクラブに参加しています。また昨年からは、学生向けに英語の補習をサポートする「英語学習支援室」でアルバイトを始めました。キャンパスの中でアルバイトができるのはありがたいですね。

僕が研究しているテーマは環境ですが、ほかにも道路や橋づくり、防災システムの整備など、さまざまな都市づくりを研究している学生がいます。

テーマは人それぞれですが、どんなアプローチにしても最終的に大切なのは「人を大切にすること」だと感じています。つい最近もトンネル崩落事故がありましたが、ずさんな工事やメンテナンスは命を奪うことにもつながってしまいます。そうした都市づくりをめざす者としての倫理観も、大学で養えた大きな財産の一つです。

上松和樹さん理工学部 都市環境デザイン学科 4年

  • 所属研究室:循環評価システム研究室(村野昭人研究室)
  • 静岡県立下田高等学校出身

  • 掲載内容は、取材当時のものです