理工学部は男子が多数派だ。しかし、なかには富澤茉佑香さんのように、女子ならではの切り口で「化学のものづくり」に挑んでいる学生もいる。実験などでチームを組むことも多いだけに、女子はみんな仲良しなのだという。暮らしの中の「もっとこんなモノがあったらいいな」という気づきや発見は、案外ガールズトークからも見つかるのかもしれない。

敏感肌の悩みが応用化学の入口に

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私の悩みは敏感すぎる肌。ちょっとパッケージがかわいいな、と思って適当に化粧水などを選ぶと、すぐに肌荒れを起こしてしまうんです。そのため、今はきちんと成分をチェックしてから買うようにはしていますが、敏感肌用の化粧品は選択肢が少ないし、値段もけっこう高いんです。

きっと、私と同じような悩みを抱えている人はたくさんいるでしょうし、もっと手頃な価格の敏感肌用の化粧品が増えたらみんなうれしいですよね。だったら私が作ります!今はまだムリですが、将来は化粧品会社の開発部に入ることを目標に定めて、応用化学科で学んでいるところです。

身の回りを見渡すと「もっとこうだったらいいのに」というモノってたくさんありますよね。友人の一人は土に溶けて環境に戻るプラスチックの研究をしていますが、「応用化学」というのは「もっと人の暮らしをよくしたい」という思いがベースにあると思います。今は生活の中のほとんどのモノに化学物質が使われていますから、私のように「こんなモノがほしい!」という個人的な望みもかなうかもしれない、とても面白い学問なんですよ。

教科書だけでは得られない学び

中高生の頃から化学は好きでしたが、実践を通して学べるのは大学ならではの学びではないでしょうか。器具や薬品もずらりとそろっていて、本格的な実験をする授業もたくさんあります。もちろん、基礎として覚えなければいけない化学の専門用語などもグンと増えますが、入学当初は高校の復習から入るので特に心配はありません。しかも、高校では教科書で覚えることしかできなかった実験を、実際に体験できるのが楽しいんです。

たとえば教科書で、「こういう実験をすると、こういう結果が得られる」と書いてあったことも、正しい手順を踏まなければ、正しい結果は出ません。大切なのは「実験と結果」ではなくて「プロセスと考察」。器具や薬品の扱いに慣れることも、結果までの過程について深く考えることも、大学ならではの「教科書では得られない学び」です。

応用化学科では、中高の理科と数学の教員免許、工業高校の教員免許を取得することもできます。私は今、中学と高校の理科の教職課程を履修しています。実験や講義など、やることがたくさんあって大変な毎日ですが、がんばって学んでいます。大学ではがんばればがんばっただけ成果が得られ、達成感が得られるため、“学ぶことが楽しい”と思える学生生活を送ることができると思います。

夢は人生を豊かにするコスメ開発

現在の目標は少しでも早く研究を始めること。研究室には4年生から配属されるのですが、3年の春学期中に一定の単位を満たせば仮所属ができるので、今はとにかく単位取得に集中しているところです。

入室したいのは化粧品にも関係する、有機合成の研究室です。実験の講義も楽しいのですが、研究室では1年間かけて一つのテーマを追究できるだけに、より大きな達成感が得られるのでは、と今からワクワクしています。

最近はアレルギー体質の子どもが増えているので、これからは敏感肌用の化粧品の需要が高まると思います。肌が弱くなってきている高齢者の方々も、お化粧を楽しみたいはずです。肌に優しくて誰もが手に取りやすい。そして人生まで豊かにできる化粧品を、いつか自分の手で生み出したい。それが私の夢なんです。

富澤茉佑香さん理工学部 応用化学科 3年

  • 群馬県・私立東京農業大学第二高等学校出身

  • 掲載内容は、取材当時のものです