「コロナ禍でも自分ができる最大限のことをしたい」と、オンラインでの海外インターンシップに挑戦した、国際学部グローバル・イノベーション学科4年の佐竹春香さん。アメリカの首都ワシントンD.C.に拠点を置く非営利団体ワシントンセンター(The Washington Center : TWC)が世界各国から学生を受け入れてインターンシップの機会を提供するプログラムに参加し、14時間の時差、初めてのインターンシップ、異文化間コミュニケーションという壁を乗り越えて、大学の授業との両立も果たしました。

オンラインでの実施に切り替わったプログラム

2020年12月、卒業を間近に控えた佐竹さんは9月から3カ月間にわたってオンラインで取り組んできたTWCプログラムを修了しました。「大学では国際関係学や国際政治学を専攻し、将来、ワシントンD.C.にあるシンクタンクで働くことを希望しているため、学生のうちにインターンシップを経験しておきたかった」というのが、プログラムへの志望動機でした。

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例年であれば、アメリカ政治の中心地であるワシントンD.C.に滞在し、世界各国から集まった学生たちとともに働き、学ぶはずだった3カ月間。しかし、新型コロナウイルス感染拡大という事態により、状況は大きく変わりました。プログラムはオンラインでの実施に切り替わったのです。
「はじめは現地へ行かなければ意味がないのではないかとも思いました。でも、オンラインであっても、貴重な機会を得られたのだから参加したい。まずは、行動を起こしてみることが大切なのではないかと思いました」。佐竹さんを突き動かしたのは、そんな強い気持ちでした。

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国際部国際課職員の山本稚子さんは、5月の学内選考に向けて、大学も当初は渡航する方向で準備を進めていたと言います。しかし、感染拡大が収まらない状況を受けて、6月ごろにはTWCとプログラムをオンラインで実施できるかどうかを話し合っていきました。「渡航できないのであれば参加は見合わせる、という選択も、もちろんできました。それでも、佐竹さんは何度かメッセージのやり取りをするなかで、迷っている様子はなく、何らかの形で実現したいという意思が強く、自ら参加を決めていきました。私はそんな彼女の気持ちを尊重したいと思いました」と当時を振り返ります。

時差や異文化間コミュニケーションの壁を前に

そして9月上旬から、佐竹さんのインターンシップが始まりました。インターンシップ先のワシントンD.C.にあるシンクタンク「Asia Policy Point」は、アメリカの外交政策やアジアの貿易などに関する調査分析を行い、情報発信をしている非営利団体です。佐竹さんは、アメリカ人のチーフとアジア人の社員数人のもとでインターンシップをすることになり、与えられた役割は3つありました。まず、ワシントンポストの記事を日本語から英語に翻訳すること。次に、毎週開催されている各種イベントやヒアリングの情報を要約して、参加者に情報を届けること。さらに、日米間の外国政策やアジア諸国内での歴史問題に関する調査を行い、日本で開催されているそれらの写真展などを訪問して情報収集し、その内容を英訳することでした。ワシントンD.C.在住の中国人インターンと2人で業務にあたり、LINEを使って、こまめにコミュニケーションを取りながら進めてきました。

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佐竹さんはグローバルイノベーション学科で日々、英語で授業を受けており、2年次に1年間スペインへの留学をしてきた経験もあるため、英語でのコミュニケーションを取ることへの抵抗はありませんでした。しかし、オンラインでのインターンシップを進めるうえで、時差が大きな壁となりました。日本とアメリカの時差は14時間。アメリカ時間でインターンシップに取り組まなければならないため、インターンシップ先とのZoomでのミーティングやアメリカで開催されているイベントに参加するには、日本時間の夜中に活動しなければなりません。インターンとして、すべて完璧にこなさなければならないと思い込んでいた佐竹さんは、夜中に現地の活動に参加し、朝から東洋大学の授業も受け、さらに日中にはインターンシップで課されている翻訳などの業務もこなし、大学院進学のための準備やアルバイトもして、さらに週1回はTWCが提供する政治学などの授業も受けて…と、寝る時間を削ってまで活動をしていました。しかし、そんな寝不足の状態では、すべてが中途半端になってしまいます。そこで、思い切って、インターンシップ先に相談を持ちかけました。

「インターンという立場の自分から要望を出すことには抵抗がありました。しかし、時差の問題があり、すべてはこなせないとチーフに相談を持ちかけると、イベントなどは自分が出られる範囲で出ればよい、と課題が改善されました。困ったことがあれば何でも話していいと言われ、自分の環境や困っていることを理解してもらうことも、円滑に仕事を進めるうえでは大切なことだと実感しました。それからは、翌日のスケジュールを時間単位で書き出して、自己管理と時間管理を徹底するようになりました」

異文化に身を置き、働いていくためには、相手の文化を理解し、受け入れることも、必要に応じて自分の意見を主張することも大切だと、佐竹さんは実感したのです。

言葉にして伝えることの大切さを経験

「会って話せば、少ない言葉でも伝わる、感じ取れることもありますが、オンラインでは対面以上にコミュニケーションをたくさん取らなければならず、言葉にして伝えることが大切です。そこには言葉の壁もあります。プログラムが始まって1週間が経ったころに、時差の問題について悩みながらもがんばっていると聞きました。その後、課題を解決するために、自ら言葉で伝え、それが受け入れられ、3カ月間のプログラムを無事に成し遂げられたことは、彼女にとっていい経験になったでしょう。オンラインであっても、行動を起こしたからこそ、その経験が得られたのです。日本にいながら安全も確保されたなかで参加でき、コロナ禍においてはベストの選択ができたと思います」と、山本さんは佐竹さんの成長を喜びます。

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プログラムを終えて佐竹さんは、「選考にあたり、履歴書の書き方やインタビューでの質問を予想して、すべて英語で回答できるような準備をするため、大学職員の方には手厚いサポートを受けました。また、TWCのアドバイザーからはインターンシップ先とのインタビューに向けたアドバイスも受けました。そして、インターンシップ先にはこのような状況下でもオンラインで参加できるプログラムを提供していただき、時差などにも理解を示してくださったことに感謝しています」と話します。大学卒業後は、アメリカの大学院への進学を希望していますが、今回の貴重な機会をステップに、次こそは実際にワシントンD.C.のシンクタンクでインターンシップを経験し、将来は就職もしたいとも意気込みを見せています。

「コロナ禍という状況にあっても、自分ができる最大限のことをしてみること。行動力がとても大切なのだと強く感じます」。佐竹さんの言葉には自信がこもっていました。

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佐竹 春香さん国際学部 グローバル・イノベーション学科4年

  • 私立女子聖学院高等学校出身
  • 掲載内容は、取材当時のものです