コロナ禍にあっても学びを止めないために、東洋大学の各学部では教員の創意工夫によりオンライン授業を進めています。なかでも、情報連携学部(INIAD)は、学部創設当初から独自のオンライン教育システム「INIAD MOOCs」による、学生がいつでもどこでも学習できる環境を整備してきたことから、スムーズにオンライン教育への移行ができました。秋学期からは、Google MeetとSlackを活用したオンライン授業に加え、対面で学びたい学生のために教室でも同時に授業を行っています。このような教育の背景には、「連携」を大切にする教育への教員たちの共通の思いがありました。

学部独自のオンライン教育システムを活用

情報連携学部は「情報を軸にした連携」を学ぶ学部です。学生は、どのような専門を学ぶにしても、必ずコンピュータ・サイエンスの基礎となる「プログラミング」を学習し、自分以外の人とコミュニケーションを取りながら、連携して課題解決をすることができる人材を育てることをゴールとしています。そして、講義を受ける際には、パソコンが学習ツールであり、いつでもどこでも予習や復習ができる学部独自のオンライン教育システム「INIAD MOOCs」が整備されています。そのため、コロナ禍でオンライン授業へ移行するにあたっても、INIAD MOOCsに用意されている教材を活用して授業を進めることができました。

「春学期は基本的にオンライン授業のみとなりましたが、実施にあたっては、教員一人一人に授業の運営を任せるのではなく、学部の教員間で授業運営のあり方を話し合い、意識を共有しました」と別所正博准教授は振り返ります。そして、ビデオ会議機能の「Google Meet」を使ってプログラミングのコードやスライドを共有して講義を行い、テキストチャットの「Slack」を使って、教員と学生間でのリアルタイムのコミュニケーションをはかるということが、情報連携学部の授業の基本スタイルとなりました。

2021022402_02
2021022402_03

Google Meetで講義、Slackでリアルタイムのフィードバック

対面の授業であれば、教員も学生のつまずきを見て取れても、オンライン授業では、学生が理解できなかったり、つまずいていたりしても、挙手して発言することがしづらく、教員も学生の状況を把握しづらいという課題があります。そこで、情報連携学部では、教員がGoogle Meetで指示を出してその通りにプログラムが書けたかをリアクションしてもらったり、つまずいている場合にはSlackでメッセージを送ってもらい、リアルタイムでフィードバックをしたりするという双方向性を持つことで、授業の質を保証することになったのです。

2021022402_04

「これまでも学生は授業中に挙手して質問するより、授業後にメールで質問を送ってくることが多かったのですが、Slackを活用したことで、授業中に質問がしやすくなったようです。今後、コロナの状況が落ち着いて、対面の授業へ全面的に戻ったとしても、Slackで随時やり取りをしながら講義を行うというスタイルは継続していきたいと、教員も学生も望んでいます」と別所先生は話します。

在学生は日頃からパソコンを使って授業を受けることに慣れているが、初めてパソコンで授業を受ける1年生には、どのように対応してきたのだろうか。別所先生は次のように説明します。

「まず授業が始まる1週間前から、オンラインで顔合わせをする場を作り、教員と授業の進め方の体験をしてもらいました。また、一緒に授業を受けている学生がお互いの顔を覚えてもらうことも大事な教育の一つであるため、秋学期からは少人数のチームでの実習を取り入れ、1週間おきにキャンパスに来て、できるだけ多くの学生が顔を合わせる場を用意し、学部のモットーである『連携』ができるようにしています」

大学は学びの場であり、連携の場だからこそ

春学期はオンラインで授業を実施してきましたが、次第に学生から対面で授業を受けたいという声も上がってきました。「家族がリモートワークをしているため、自宅ではオンライン授業を集中して受けられない」「直接、先生の顔を見ながら授業を受けた方が理解しやすい。質問もしやすく学習が進む」など、理由はさまざまでした。また、講義の内容によっては、チームで作業を進めて学習することもあり、「顔を見たこともない人とチームを組むのは進めづらいので、大学に集まって顔を合わせて議論をしながら進めたい」という声もありました。

このような要望に対して、教員たちは学部としてどのように対応すべきかと議論を重ね、「大学(キャンパス)は学びの場」であることを大切にしているのだから、「対面で授業を受けたいという学生が1人でもいる以上は、教室でも授業を受けられる場を提供すべきだ」という結論に至りました。

そこで秋学期からは、オンライン授業を基本としながらも、学生が対面授業を希望する場合には、教室で受けられるように、オンラインと対面を組み合わせたハイブリッド型の授業が始まりました。

2021022402_05
2021022402_06

「大学は講義を受ける場という位置付けだけではなく、チームを組む人たちと連携をする場、連携する相手と出会う場でもあります。その意味でも、“大学に来る”ということを大切にしたいと考えています。もちろん学生や教職員の安全が第一なので、教室の定員は通常の2〜3割に絞ったうえですが、大学で授業を受けたいという学生の要望にはできるだけ応えられるようにしています」

コロナ禍の状況がいつまで続くのかは誰にも分かりません。先行きが見えない時代だからこそ、「連携」が大切だと別所先生は強調します。

「学生にはこのような時こそ、連携の大切さを理解してもらいたいと思います。一人でできることには限界があります。だからこそ、他の人とコミュニケーションを取って、どうしたら課題を解決できるのかを考えていくことが、これまで以上に必要とされてくるでしょう。また、教員もこのような状況をいかに乗り越えて、よりよい教育を提供していくかを考えて、連携していくことが大切だと考えています。情報連携学部としては、2021年度以降もオンラインと対面の良さをそれぞれ取り入れながら、新しい学び方を実践していきたいと思います」

pf-ninomiya.jpg

別所 正博准教授情報連携学部 情報連携学科

  • 専門:ユビキタス・コンピューティング
  • 掲載内容は、取材当時のものです