「日本はまだまだ世界から期待されている。繁栄へのカギは、モノづくり(製造)だけでなく、医療や福祉、教育など、世界のかけ橋となるようなものをつくり出していくことだ」。そんな熱い思いをのぞかせる中北徹教授の言葉からは、この国を愛する気持ちが伝わってくる。これこそが、錯綜して先が見えない時代にも希望を抱かせる、大切な学びの志だ。

日本に、世界に、関心を持とう

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国際経済をなぜ学ぶのか。私は学生のみなさんにぜひ問いたい。今の世の中、国内に格差はまだまだあるけれど、不況だ不況だと言っても、みんな生活はそれなりにきちんとできています。むしろ昔の日本の方が貧しかったのに、多くの人は海外にあこがれ、企業は技術を磨き、一人ひとりが夢を語っていました。しかし、もっと日本のことを知ろうとしなければならない。今それが感じられないのは、世界への関心の薄さを物語っているのではないかと思うのです。日本のことをわからないと、世界を見てもきっとわかりません。それと同時に、日本を外側から見ることも大切です。日本の内側ばかり見ていると、金太郎飴のような同一のことしか言えなくなってくるでしょう。

「国際」というからには、日本のことも、海外のことも、もっと関心を高めて知ってほしいと思うのです。

社会の動きをまとめる知識として

限られた国々の間において、これまでずっと貿易や資本を自由化しようと進められてきました。無条件にというわけではなく、安全基準を明確にして、参加国を広げて自由競争していくのは良いことだと思います。中国もアメリカも自国の利益、つまり国益に対する動きはすごい。日本国内だけを見ていると、問題点がクローズアップされることは少ないけれど、もっと「このことは問題じゃないか」という意見がでてきてもいいはずです。

社会の動きや将来についてしっかり議論することはなかなか難しいものです。みんな考え方やコトバも違いますから。私が経済学に関心を持ったのは、そうした社会の様々な動きを整理して考えていくための共通言語がいる、と考えたからです。経済学というのは、その最たるものではないでしょうか。社会に関することは、利害調整もからんでくるし、それぞれ人の反応も違ってきますが、「社会のしくみを考えるために必要な共通の道具」として経済学があると思うのです。

“健全なる懐疑心”を持つ

今話題のTPP問題については、ゼミナールでも取り上げています。現段階では交渉の内容がまだ発表されていませんが、問題なのは、関係国間で交渉しているというのに、どんな交渉をしているかが外に報じられないという点です。解決に至るにはまだまだ先は長いでしょう。しかし、この交渉を通じて、国内で普段目に見えていなかったものが浮かび上せるようになったことも事実です。医療や経済安全保障(食料、衛生など)に関することなど、取り上げてほしいと思うことがクローズアップされてきました。安全基準を明確にして、生活の質や健康についてフェアに考える共通の枠組みを持つことが必要ではないでしょうか。

違う主張があってこそ、対応性や強さが育まれるもの。みんなが一斉に同じ方向を見てしまうと、この国は弱くなってしまいます。意見を一つにまとめないと社会がまとまらないかのように言われがちですが、必ずしも私はそうは思いません。むしろ、もっと個々に、“健全な懐疑心”を持ち、「それはどうしてなのか」「本当に事実なのか」という気持ちを持って、自分の生き方を育てていくことが大切です。それは学びにおいても同じですね。

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中北徹教授経済学部 国際経済学科

  • 専門:国際経済学、産業組織論、金融論

  • 掲載内容は、取材当時のものです