観光を成り立たせている「行く側」と「迎える側」。この相対する視点を並行して学ぶことで真の観光を理解する、というのが島川崇准教授の確固たる指導方針だ。その方針に沿って学んだ教え子たちは「自分の良さを知っている人間」「何をすれば他人が喜ぶかに敏感な人間」へと成長し、巣立っていく。そんな彼らの姿は魅力的だ。

「行く側」と「迎える側」で成り立つ観光

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「観光」と「旅行」はよく混同されがちですが、この2つには実は明確な違いがあります。「旅行」というのは、ただ“(現地に)行くこと”のみを指しますが、これに対して「観光」は、行く側と迎える側が存在し、両者が相互に関わることで成り立ちます。

国際観光学科では、まず“行く側”の視点で、世界の観光地について学びます。同時に“迎える側”として、たとえば観光地におけるまちづくりやホスピタリティ、また外国人を迎える際に日本の魅力をどう伝えるかなどを研究しています。

“行く側”と“迎える側”という相対する視点を両輪で学んでいくことは、「観光」を理解する上でとても重要です。

さらに、この「両輪で学ぶ」というのは国際観光学科におけるキーワードにもなっており、学生たちへの講義も“実務”と“理論”の両輪で指導しています。

観光の“実務”というのは、海外の観光資源や、旅行業を営む上で必要な法律(旅行業法)、運賃の計算方法などといった知識について。一方の“理論”というのは、一例を上げると、主に開発途上国では外資系の資本が介入してリゾート地をつくりあげていますが、観光客が落としたお金はすべては地元に落ちず、外資系の本国に流れている現状があります。こうした問題を、浮き彫りにしていくのです。その地を訪れた旅行者は楽しみ、地元にも経済効果が生じてみんなが幸せになる、というのが観光産業の理想の構図ですが、そのためにはどうすべきか。そういったテーマを理論化していくわけです。

実務だけを学ぶのではダメ、かといって実務から離れた理論というのも、まったく意味をなさない。両輪で学ぶことが、必要不可欠なのです。

みんなが幸せになる「被災地観光」のあるべき姿の探求

現在、私は「被災地観光のあるべき姿」を研究しています。観光による経済効果を震災などの被災地の物心両面の復興につなげられないか、という考え方です。

先だっての東日本大震災で津波の被害を受けた東北地方でも、その爪痕を自分の目で確かめに訪れたり、地元で買い物をしたりする観光客を受け入れることで地域の経済が回り、復興につながる側面があります。訪れる側からしても、津波の悲惨さを想像し、そこから教訓を学んだり、あるいは被災地の人々と気持ちを共有したりする経験ができ、正に両者共に“WIN-WINの関係”となり得るのです。

また、津波伝説で知られる和歌山県広川町では、津波の教訓を後世に伝えようと、住人がたいまつを持って八幡神社に練り歩く「稲むらの火まつり」などのイベントを開催しているのですが、このイベント自体、実は津波が来た時の避難訓練にもなっています。

こうした観光イベントに仕立てたことで多くの人が興味を持って訪れ、津波の教訓を語り継ぐと共に、地元の経済効果にもつながっているのですから、非常に素晴らしいことです。このような事例をもとに、自然災害の復興過程に観光を導入することのメリットを、今後は世界の自然災害の被災地に積極的に紹介していきたい、と思っています。

国際観光を学ぶことで魅力ある人材に

観光を成り立たせている“行く側”と“迎える側”それぞれには、違った魅力があります。

「(旅行に)行く」ことの魅力は、自分たちとはまったく異なる文化を持つ人と出会える、という点。そして、自分とは違う人たちを知ると、自分たち自身の良さにも気づくことができます。

一方の「迎える」側の魅力は何といっても、人に喜んでもらえる、ということ。そのためには、相手が何をすると喜んでくれるのかに対して、常に敏感でなければなりません。

つまり、国際観光学科で学ぶと「自分の良さを知っている人間」「何をすれば他人が喜ぶかに敏感な人間」へと成長できるのです。この2つの素養が身についている人間というのは、どんな分野に進んでも魅力的といえるのではないでしょうか。私は教え子たち全員が、観光学という新しい学問を通じてそうした魅力ある人材に育ってくれることを願っています。

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島川崇教授国際観光学部 国際観光学科

  • 専門:観光マーケティング、サステイナブル・ツーリズム、福祉観光、航空経営論

  • 掲載内容は、取材当時のものです