「経済学のスタンダードを着実に修得できる本学科の学生たちには、理論も実証もしっかりと学んでほしい」と語る鮫島裕輔准教授。「ゲーム理論」という、いかにも楽しい響きの講義を担当し、戦略的思考を分析する面白さを説きながら、互いに有益な関係を築くための方法を考える建設的な視点に気づかせてくれる。

ミクロの視点で社会を捉える

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経済学には、「マクロ経済学」と「ミクロ経済学」の2つの基礎理論があります。景気動向を見るなど、国の経済を大きなカタマリとしてとらえて分析するものをマクロとすると、個人や個々の企業といった小さな経済主体の行動をとらえて分析するものがミクロ。私の専門でもあるミクロ経済学では、ミクロの視点の分析を積み上げて経済現象や市場経済を分析します。

日本もですが、市場経済の国では、一人ひとりが好きなものを消費し、企業はそれぞれが利益を大きくしようとしています。みんなが自分勝手に行動しているようにも見えますが、実は社会全体でみると、資源が無駄なく配分されているという意味で望ましい状態にたどり着きます。これは、ミクロ経済学で示される重要な結果です。分権的な社会でみんなが自由に行動しているけれども、それが効率的ないい状態をもたらす。私たちが生きている社会の良さを示しています。こうした興味深い結果に出会えることが、ミクロ経済学の魅力です。

“個”の行動を読むゲーム理論

ミクロ経済学論の一分野である「ゲーム理論」が私の担当する講義です。ゲーム理論とは、複数のプレイヤーが互いに影響を与え合う状況において、一人ひとりがどのように意思決定をするのかを分析するもので、戦略的思考を分析する理論とも言えます。

たとえば、将棋やオセロなどをイメージしてください。相手がこちらを出し抜こうとするのを、こちらはさらにそれを上回る手を考えます。ゲーム理論を学ぶと、相手の出方を予想しながら自分にとっての最適な戦略をあれこれと思考するようになるので、“考える力”が身につきます。

私がゲーム理論に関心を抱いたのは、大学院生になってからでした。じっくり考えることに楽しさがあるのですが、意外な結論が見出せることがある点も見逃せません。予想が覆えるというか、一見正しくないと思われることが実は正しいとわかったりする、そこにも面白さを感じるのです。

ゲームのルールを作る面白さ

ゲーム理論がどんなところで使われているかを紹介しましょう。たとえば、オークション。普通のオークションでは、骨董品などの出品に対して、最高値で入札した人が自分の入札額を支払って買い取れるのですが、最高値で入札した人が2番目に高い入札額を支払って買う、というオークションもあります。これは「セカンドプライスオークション」というものですが、「入札額を戦略的に操作しても得にならないので、自分の評価金額で正直に入札することが、実は一番いい戦略なのだ」というしくみになっていることを、ゲーム理論で証明できます。

セカンドプライスオークションは「正直が一番」という特徴を持つルールです。望ましい特徴を備えた「ゲームのルール」を設計するという研究分野は「メカニズムデザイン」といい、私の研究テーマでもあります。複雑なメカニズムを考案したこともありますが、現実に応用できそうなものも考えることが今後の課題です。ただ、ジグソーパズルを組み立てるように、“考える”ことは、本当に面白いものなのです。

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鮫島裕輔准教授経済学部 経済学科

  • 専門:ミクロ経済学、ゲーム理論

  • 掲載内容は、取材当時のものです