法学部の学生は、憲法や刑法に興味を持つ人と、民法に興味を持つ人の2種類に分かれることが多いという。大坂恵里准教授が心引かれたのは、私人間の取り引きに関する規律である「民法」の世界。公害訴訟にかかわったという恩師の影響が大きく、「環境法」を専門とするに至った大坂准教授は、東洋大で唯一、環境法を教える教員だ。

高校までとは違う学びを

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大学では何か新しいことを学びたい。そう思って飛び込んだのが法律の世界でした。民法ゼミの先生が公害訴訟にかかわっていた人で、その影響を受けて私も「環境法」を専門とするようになりました。

最近でも患者認定などのニュースでその名を聞く水俣病。みなさんが生まれるずっと以前の、いったい何年に発生した出来事だったでしょうか。

水俣病が公式に確認されたのは1956年のことです。もう半世紀以上の歳月が流れているのに、いまだに司法の場では過去の事件としては扱われていません。

東日本大震災においても、原子力損害についての賠償問題が大きく横たわっています。放射性物質による土壌汚染や水質汚濁、汚染された廃棄物の処理問題など、現代は環境法によって対応しなければならない事象が山積みです。

法の面白さは「わからないこと」

環境法に関する授業では、四大公害病をはじめとする過去の公害や環境問題について、まずその歴史から学びます。公害はなぜ引き起こされたのか。それに対して、法律はどう対応したか。さらに被害者はどのように救済され、訴訟の結果どうなったのか。前期の授業ではそうした「起こってしまった」出来事について学びます。

後期の授業では、「環境破壊の防止」という側面について環境基本法などの個別環境法を学んでいきます。環境を守っていくために、企業は何をしなければならないのか。環境方針などの目標を決めて取り組む、「環境マネジメントシステム」についても学んでいきます。

法律を学ぶ面白さは、「わからないこと」にあると思います。人が作ったルールなのに、解釈の仕方はさまざまです。環境法も日進月歩で、その変化を追っていくのが楽しみでもあるのです。

社会の中にさまざまな問題点が潜んでいるからこそ、法律があります。みなさんもぜひ、「今、世の中にどんな問題が起きているのだろう?」と、好奇心の眼で世の中を眺め、日々のニュースに触れてください。社会における法の役割を意識することで、普段のニュースが違った側面を持って見えてきます。

めざす将来像を明確に描いて

最近の学生は、「これをやってください」と言えば器用にこなす人が多い反面、「自分でテーマを探してください」と言うと苦労する人が多いと感じています。テーマを自分で探し出すためには、普段から課題意識を持ち、自分だったらこうすると「仮説」を立ててトレーニングするのも良い方法です。

将来像がハッキリしている学生ほど、飲み込みが早いというケースが多々あります。「ゲームに出てくる弁護士のように『異議あり!』と言ってみたかった」「ドラマで見た検事さんがカッコ良くて」など、法学への第一歩は安直なものでも一向に構いません。めざしている姿がしっかりと見えている学生は、総じて勉強熱心ですから。

企業法学科は、リーガル・マインド、つまり物事を公平に判断する力を養い、ビジネスの場で必要とされる法知識を身につけることを主な目標としています。企業のコンプライアンス(法令遵守)が重要視される今、適切な企業活動と社会貢献のために、その力を役立ててください。

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大坂恵里教授法学部

  • 専門:環境法、不法行為法(民法)

  • 掲載内容は、取材当時のものです