インターネット上でふくらみ続ける情報の数々。それらを内容や形式で分類して、必要な情報をすぐに取り出せる仕組みを考えるのが図書館情報学という学問だ。この学問の世界では正解は○×では決められない。「観点によって分類の仕方も違います。自分なりの仮説を立て、自分で考える力を身につけてほしい」と栗山和子教授は語る。

一定のルールにそって情報を分類

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インターネット上には、計り知れないほど大量な情報が蓄積されています。近年では、ブログやSNSのような個人が情報を発信できるサービスが普及したため、情報の内容や質が多様化し、これまでのような数値や文字のデータだけでなく、音声や動画といったマルチメディアデータも増えています。

私が専門とする「図書館情報学」は、文献・資料の収集・分類・保存・利用などについて研究する図書館学と、情報の利用や情報そのもののあり方などについて研究する情報学を融合した学問です。情報化が進んだ現在では、従来の図書や雑誌のような印刷メディアのほかに、CD・DVDなどの音声・映像メディアやWebサイトなどのデジタルメディアも研究対象となっています。

最近では、インターネット上に蓄積され続ける膨大なデータのなかから、検索する人の目的に合う情報を、いかに素早く提供するかということが課題となっています。そのためには、蓄積されたデータの中から必要な情報を一定のルールで取り出す情報アクセス技術を考えなければなりません。ただ単に、検索結果を提供するだけでなく、たとえばamazonの「おすすめ商品」のような、ユーザーが自分で検索しなくても、それまでの検索・購入履歴に応じて興味・関心のありそうな関連情報を提供する「レコメンデーション」というサービスもその一つに数えられます。

情報メディアという観点では、3・11以降、Twitterなどのソーシャルメディアも情報源として注目されるようになりました。個々のユーザーから発信され、次々と蓄積されていく情報を、内容や形式に応じたタイプで分類する技術を開発することで、必要なときに必要な情報を取り出せるようになるのです。

統計学やプログラミングの知識が必要

情報のタイプの分類には、統計学やプログラミングの知識が求められます。本学では社会学部のなかにメディアコミュニケーション学科が置かれ、私はこの学科で指導にあたっています。図書館情報学で必要とされる統計学の知識は、社会学分野全般においても必要とされるものです。統計学やプログラミングと聞くと、文系志向のみなさんには難しそうに感じるかもしれません。しかし、入試では数学を受験科目として選択しなくても受験することができますし、データの収集や分析にはパソコンを使いますから、アンケート調査やインタビュー方法などの社会調査の基礎や統計解析ツールの使い方をマスターすれば、情報の分類や分析はできます。入学後には、社会調査法や統計学も基礎から学べますので、文系のみなさんも興味を持って安心して学ぶことができると思います。入学後は、人がどのように情報を選択したり、評価したりといった行動をするのかを考え、「情報と情報メディア」について学んでいきましょう。

自ら課題を見つけ、考える力を

私は現在、TwitterやQ&Aサイトなどのソーシャルメディアの投稿をタイプに分類する研究をしています。みなさんも一度はQ&Aサイトを利用したことがあるかと思いますが、例えば、質問には「事実を求める場合」と「他者の意見を聞きたい場合」があります。事実を求める質問の場合は、客観的な正解が存在します。質問者は寄せられた多くの回答のなかから自分にとっての正解であるベストアンサーを選びますが、事実かどうかによって客観的に正解を判断することができます。他者の意見を聞きたい場合は、質問者は一つの正解を求めているのではなく、いろいろな人の意見を聞いて判断材料にしたいだけであり、同じような質問であっても、質問者の好みや状況によってベストアンサーは異なります。

このようなサイトで蓄積されていく情報から、人間が自分に必要な情報を必要なときに取り出すのは難しいことです。そこで、コンピュータで分類して、自動的に情報を取り出すためのルールを考えるのです。作成したルールに基づき、コンピュータで分類した結果を、人の手で分類した結果と比較し、どれだけ人の分類に近づけることができるかを検証します。

情報の分類・分析にはいろいろな考え方や方法があります。観点が違えば、分類・分析の仕方も変わってきます。実際のデータから、自分なりの仮説を立て、それに基づいた分類・分析を行い、仮説を検証するという研究は楽しいものです。この分野の学問に興味を持ったみなさんには、ぜひ自分で課題を見つけ、自分で考える力を身につけて学んでいってほしいと思います。

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栗山和子教授社会学部 メディアコミュニケーション学科

  • 専門:図書館情報学

  • 掲載内容は、取材当時のものです