毎日の暮らしの中で、好奇心というアンテナを張り巡らせていると、ふとした拍子に、大きな学びへとつながる情報をキャッチすることができます。社会学部社会心理学科の岸優里香さんにとっては、一本の映画が、進路を決める大きなきっかけとなりました。社会心理学を学びながら考え続けた「人を笑顔にし、幸福にすること」。それは就職先を選ぶ尺度となり、やりがいを感じる仕事との出会いをもたらしました。

心理学から改めて学んだ人との接し方

心理学に興味を持ったのは、高校時代のこと。心理戦でゲームを制していく「ライアーゲーム」という映画を見て、「相手の心を読んでみたいな」と思ったのがきっかけでした。私は国際的なことにも興味があったので、実は国際地域学部も受験しました。どちらの学部にも合格して悩んだ末に、「心理学で外国との文化の違いを学ぼう」と考え、社会心理学科を選びました。

私が専攻した社会心理学は、人が2人以上集まった時に生じる心理現象や行動の理由を研究する学問です。「相手の心を読みたい」と思って心理学を志したのですが、勉強を進めていくうちに、「人の心は読めないのだ」ということがわかりました。それと同時にもう一つ、大切なことにも気付いたのです。

私が1年生から入った戸梶亜紀彦教授のゼミナールは、先入観が与える影響を研究しているゼミでした。1年次からグループ発表を体験し、2年次以降は自分が疑問に思ったことを調べて発表する経験を積みました。ゼミ以外の、実験法を取り上げる授業でも、実験者効果(実験する人の期待が被験者に影響を与えること)などを学びました。その中で私が実感するようになったのが、「先入観を持たずに人と接することの大切さ」です。こうした4年間の学びを通して、自分自身に「客観的に物事を見る力」がついたという実感があります。

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日本の大学生にとっての幸せを追求

卒業論文では、「日本の大学生の安定的幸福感」をテーマに選びました。以前、ブータン国王夫妻が来日した際、ブータンの「国民総幸福量」という考え方や、ブータン国民の幸福度の高さが話題になったことがありました。同時に、日本人の幸福度は高いとは言えない、という話題もよく取り上げられました。その時、「平和で豊かな日本の人々にとって、幸福とは何だろう」と考えたことが、テーマ設定につながったのです。

論文を書くための調査を進めるうちに、「100%の幸福を幸福ととらえない」という日本人の考え方が浮き彫りになりました。日本人は「いいことがあれば、悪いこともある」と考えるため、「100%幸福」とはとらえないということです。

また、これまで世界各国で行われてきた幸福度調査では、幸福かどうかの尺度が「自尊心」でした。自尊心が幸福の尺度になるのは、欧米の考え方。一方で、日本人の幸福の尺度は、「周りとうまく共存していること」だということが見えてきました。

その背景には、強い自尊心を持ってしまうとうまくやっていけないという日本独自の社会構造があります。そこで、幸福の尺度を自尊心ではなく、「周囲との共存」に変更して調査したところ、日本の大学生も幸福を感じているという結果が生まれました。さらに、「周りとの共存」が幸福の尺度になっている日本人にとって、「幸福の反対は孤独」であること、「幸福と孤独は表裏一体」であることもわかりました。

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営業職の立場から人を笑顔に

人の笑顔を見ることが好きな私にとって、「幸福と人々の笑顔」は追求し続けたいテーマのひとつです。だからこそ、就職活動でも、「人々を笑顔にして、幸福にできる会社」かどうかを基準として選びました。そして、人々が笑顔で幸せを感じるために、何より大切なのは健康です。就職活動の初めの時期は業種もばらばらに入社試験を受けていましたが、このことに気付いてからは、製薬会社の営業職に焦点を絞って就職活動をしてきました。

大学時代のアルバイトを通じて接客には興味を持っていましたが、営業職こそ、人と接する仕事ではないかと考えるようになったからです。製薬会社の場合、営業担当者が営業を行うことで資金が集まり、それによっていい薬を作るための研究ができます。私が直接薬を作ることはできませんが、MR(医薬情報担当者)なら、いい薬を作るための資金を得るお手伝いができます。そのことに気付いたら、とてもやりがいのある仕事だと感じるようになったのです。

MRの仕事は、忙しい医師に話を聞いてもらうためにも、信頼される人であることが大切だと聞いています。一日も早く医師の信頼を得られるよう、これからも努力を続けていきたいと思います。

岸 優里香さん社会学部 社会心理学科 4年

  • 内定先:株式会社ツムラ
  • 所属ゼミナール:戸梶亜紀彦ゼミナール
  • 東京都立北園高等学校出身

  • 掲載内容は、取材当時のものです