イン・ミィントンさんが日本に親しみを抱いたのは、ミャンマーでも空前の人気となったテレビドラマ「おしん」がきっかけでした。さらにホテルスタッフが主役のドラマで日本のホスピタリティに感激したことが、留学への原動力となりました。現在、ミャンマーでは学ぶことがかなわなかった「観光学」について、知識を深める日々を送っています。

「日本語」と「観光」が学べる日本へ

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日本がさまざまな技術の優れている国ということは知っていましたが、サービスの分野でもきめ細やかな心配りができる国であることを知り、日本に関心を持つようになりました。そこでミャンマーの大学で日本語を専攻し、最初の2年間はミャンマー人の先生から、その後は日本人の先生から日本語を学びました。ミャンマー語と日本語は文法が似ている部分があるので学びやすく、「読む力」と「書く力」は随分上達しました。その反面、「聞く力」と「話す力」が思うように伸びなかったため、日本に留学して日本語力を高め、日本の文化を学びたいと思うようになりました。

留学するにあたり、将来は、日本人をはじめとした外国人観光客のツアーガイドになりたいと考えていました。しかし、ミャンマーでツアーガイドになるのは非常に狭き門。さらに、ミャンマーには観光学を学べる学校がありません。そのため、大学卒業後に日本語学校で働き始めたところ、日本語に接する機会が増え、日本へ留学したいという気持ちが日増しに高まっていきました。学校主催の日本語翻訳コンテストで2位に入賞できても満足できず、日本で学びたいという思いは強まるばかりです。そしてついに「今の状態でミャンマーにいても観光の仕事に就けないのなら、日本に留学しよう」と一念発起。2011年10月に日本にやってきました。

しかし、大きな地震が起きた後ということで、周囲には日本に行くことを心配する人もいました。それでも、日本で勉強を続けている知人もいたので不安はありませんでした。留学費用を工面してくれた両親と一番上の姉のためにも日本でしっかり勉強しようと、まずは1年半、日本語学校で日本語を勉強しました。そして、東洋大学に国際観光学科があることを知り、日本で観光について学べるとはまさに私の求める理想の学科だと、迷わず進学を決めました。

「横のつながり」がうれしい授業

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日本に来て驚いたのは、時間に対して非常に厳しいことです。電車が時間通りに来ることにもびっくりしました。初めてのアルバイト先だったユニクロは時間にはとりわけ厳しく、のんびりとしているミャンマーとのあまりの違いに戸惑いました。それでも暮らしているうちに次第に慣れ、私にとっても「時間を守る」ことが当たり前のことに。時間管理の大事さを知ると同時に、時間にきっちりしているというのは日本の良い面だと感じるようになりました。

授業は大変ですが、ミャンマーでは学びたくとも学べる場所も機会もなかった観光学を学べるため、毎日がとても楽しく充実していて、貴重な時間を過ごしていると実感しています。新鮮だったのは、グループディスカッションが多いこと。ミャンマーでは「個人で学び、個人で試験を受けて終了」という感じで、学習面での横のつながりはありません。東洋大学ではプレゼンテーションでも役割を決めてグループで発表するので、自分の意見を発信する力が付きましたし、チームワークの大切さも学びました。

日本語についても、ミャンマーではなかなか上達しなかった「聞く力」がぐっと伸びたと感じます。授業だけでなく、友人と話したりテレビを見たり、さらにアルバイトも日本語習得の助けになっています。

民宿に住み込んでインターンシップ

地域復興に関する知識を得るうちに、観光だけでなく地域復興にも興味を持つようになりました。そこで昨夏は、福井県若狭町の民宿にインターンシップに行きました。他大学の学生とペアで民宿に住み込んで2週間お手伝いをしつつ、その宿に外国人観光客を集客するにはどうすれば良いかを考える課題が出されました。民宿のお客様の多くは海水浴が目的でしたが、なかには民宿の人とおしゃべりするのを楽しみに訪れる方もいて、学ぶことの多い貴重な経験になりました。そして、課題に対するプレゼンテーションとして、外国人は体験型の旅行が好きなので、若狭の名産である梅にちなんで梅狩りや梅酒造りに挑戦したり、これも名産であるイチゴ狩りを楽しんでもらったりすることなどを提案しました。さらに外国人観光客は交通手段がないことから、ツアーバスを用意してアクセスしやすい環境を作ることを発表しました。3月には、徳島県にひなまつりイベントを手伝いに行きました。

日本の観光地巡りも楽しんでいます。ミャンマー人仲間とお正月に旅行するのが恒例となっていて、これまでに京都や奈良、大阪、神戸などに行き、今年は富岡製糸場に行ってきました。個人的に大好きなのは奈良です。私自身が仏教徒なので、奈良の静かな寺院にいるととても落ち着けます。

卒業後は、ミャンマーでも生かせる仕事を選択の基準とし、日本のホテルや旅行会社で働きたいと考えています。日本で仕事の経験を積み現場のスキルを身につけてから帰国し、母国で念願の観光の仕事に就くことが最終目標です。ミャンマーは観光面ではまだまだ遅れていますが、豊かな自然に恵まれ、隠れた見どころがたくさんある美しい国です。ひとりでも多くの方にその魅力を知ってもらえる仕事をしたいですね。

イン ミィントンさん国際地域学部 国際観光学科2年

  • 出身国:ミャンマー
  • 出身校:Sun-A語学院大江戸校

  • 掲載内容は、取材当時のものです