企業活動に関係する様々な出来事について研究する経営学。どうしてあの企業は儲かっている/儲かっていないのか。企業間競争において勝敗が分かれた理由はどこにあったのか。「経営戦略論」を専門とする経営学科の山口裕之講師は、物事の理由を考える力を身につける指導に力を注ぐ。

企業活動に関わる現象の理由を探る

2013060136_img_02

経営学とは、企業活動に関わる様々な現象の理由を探る学問です。企業が利益を上げるためには、様々な活動をうまく進める必要があります。たとえば、製品の開発・生産・販売をはじめ、ライバル企業との競争、従業員のやる気やチームワークを引き出すことなど、挙げていけばきりがありません。そうした様々な活動をうまく進めている企業もあれば、そうではない企業もあります。

ある活動の失敗や成功の背後には、必ず理由が存在します。その理由を探れば、企業活動をうまく進める手がかりが見えてきます。うまくいく原因を採り入れ、うまくいかなかった原因を取り除くという具合にです。

絶対的な正解がない面白さ

しかし、現実はそんなに簡単ではありません。企業活動に関する現象の理由はとても複雑だからです。いろいろな要因が絡み合っているため、「これをすれば必ずうまくいく」という方法は存在しません。絶対的な正解は存在しないのです。

たとえば、ある企業が、商品を迅速に作れることで、競争で優位に立っていたとしましょう。では、迅速に作れれば、常に競争で優位に立てるかというと、そうとは限りません。迅速に作れるということだけではだめで、迅速さがお客さんに求められていることも必要なのです。さらに、このペアがそろったとしても、ライバル達が同じ速さで商品を作れるようになれば、いずれ優位に立てなくなります。

このように、お客さんのニーズやライバルの動向によって、うまくいく方法は違ってきます。一度うまくいった方法でも、次は通用しないかもしれません。企業をとりまく状況をきちんと把握しなければ、うまくいく方法は見えてきません。それぞれの状況のなかで、物事の理由を踏まえ、これから採るべき方法をうまく考えられるか。この腕の善し悪しが問われるのです。そこには、絶対的な答えはありません。さまざまな視点から、自分の答えを組み立てることが、面白さの1つだと思います。

物事の理由を考える力を鍛える

企業活動をうまく進める方法を提供してくれるのが経営学だ、と思われがちなのですが、これは誤解です。経営学が提供してくれるのは、企業活動に関する出来事を理解・整理するための道具や方法です。

では、経営学を勉強し、その道具や方法を知れば、うまくいく方法を考えられるようになるかというと、そうでもありません。バットやその振り方を知っているだけでは、ボールを遠くに飛ばせないことと同じです。道具や方法を使いこなす訓練が必要なわけです。

私のゼミでは、この訓練を行っています。まず、経営学に関する本に基づきみんなで議論します。本を読むことで考える方法や道具を勉強するわけですが、これは宿題です。ゼミの時間では、本の内容について「それはどうして?」と議論を重ねていきます。論理的に考えを重ねる能力を鍛えるためです。

これと並行して、おもしろい出来事を見つけ、その理由を実際に探ってもらいます。2~3年生は4~5人のグループで、4年生は個人でおこなっています。これも宿題で、そこで終わりではありません。ゼミの時間では、発表してもらい、その発表内容に基づきみんなで議論します。

宿題がいっぱいでとても大変そうですが、実際に大変です。そういう声も聞こえています(笑)。でも、真剣に議論するためには、準備することが必要です。

真剣な議論では、自分の考えのあらや、自分が思いつかなかった考えが明らかになったりします。学生と一緒に議論に参加している私も、そうした発見にしばしば直面します。そのたびに、出来事の理由を考えることの難しさを痛感します。それと同時に、少しずつその難しいことができるようになっていることが実感できます。こうした成長を感じられることも、おもしろさの1つだと思います。

2013060136_img_03

山口裕之准教授経営学部 経営学科

  • 専門:経営戦略論、イノベーション・マネジメント

  • 掲載内容は、取材当時のものです