月別アーカイブ: 2017年3月

室町時代に確立された能のことばは、王朝文化のことばが元となっており、和歌・漢詩文・仏教思想など、それまでの日本人の教養の積み重ねを礎に形成されています。なかでも、日本王朝文化の精髄である古今和歌集の影響は非常に大きいとされています。
日本最初の勅撰和歌集である『古今和歌集』は、多くの和歌を愛する人によって広められ、四季の移ろいなどへの美意識が形作られます。鎌倉時代の秀歌撰である「小倉百人一首」では、『古今和歌集』などの古歌を引用して歌を作る本歌取りや、現代でいうアンサーソングのような歌を作ることで、王朝文化の美意識を受け継ぎながら新たな美学を作り出していきました。この頃から、歌だけでなく歌人も注目を浴び、崇拝された歌人が物語の主人公として登場し、伝承され、室町時代の能の作品にも受け継がれていったのです。
紫式部は『古今和歌集』で在原行平が詠んだ歌のイメージから光源氏像や物語を作ったと言われています。そして、能の作品である「松風」もまた、在原行平の詠んだ歌や、歌から生まれた在原行平像を元に作られた作品です。在原行平の「立ち別れ いなばの山の みねにおふる まつとし聞かば 今帰り来む」という歌の「待つ」という気持ちを表す言葉から「松風」という実ることない恋の相手を永遠に想う物語が生まれていることからも、一つの和歌から物語が膨らみ、日本の伝統、美意識が受け継がれていることが分かります。
和歌の力、言葉の力から日本的な四季意識や豊かな感性を学ぶことは、みなさんのこれからの人生に大きな影響を与え、自分の可能性を広げていくことになるでしょう。

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原田 香織教授文学部 日本文学文化学科

  • 専門:日本中世文学、能楽

「金海奇観」は、仙台藩の儒者である大槻磐渓が、藩主慶邦公にペリー来航の様子を説明するために作成した絵巻です。この資料に基づいて、ペリー来航がどのようなものだったのか、歴史の追体験を分析・考察し、歴史学の原点を学んでいきます。
「金海奇観」には、嘉永7(1854)年、日米和親条約の締結交渉の場面がいくつか描かれています。9隻のアメリカ艦隊が並ぶ、横浜の海を俯瞰して描いた絵には、艦隊の名前や大砲の数、来航した日などが比較的正確に記されています。交渉の場として使われた横浜応接所近辺の絵では、アメリカのボートが海に向かって、ボート砲による祝砲を放ち、煙が立ち上る絵が描かれています。このボート砲は、蒸気船と並び、日本人に危機感を与えたと言われています。応接所内部の絵には、多くの海兵隊とともにペリーも描かれているほか、交渉を行った部屋やプライベートな会話をする部屋だけでなく、トイレや調理場なども記されています。そのほか、旗艦の詳細が描かれた艦隊図、上官、伍長などの身なりが描かれた人物図などもあります。この絵巻に正確に描かれているピストルの絵を見て、実物を作りあげてしまった藩があり、そのピストルで致命傷を負ったのが、桜田門外の変での井伊直弼でした。
砲術家でもあった大槻磐渓は蒸気機関車にも興味があり、この絵巻に蒸気機関車やレールの絵を描き、その寸法まで取ってあります。西洋文明に非常に関心を持っていた人物と言えるでしょう。

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岩下 哲典教授文学部 史学科

  • 専門:日本近世・近代史

2017年3月28日(火)、東洋大学の全4キャンパスで、“ 学び ”LIVE授業体験を開催します。

当日は、4つのキャンパスで約100の授業を公開。
実際に大学で教鞭をとる教授陣が、大学進学を考えるみなさまに、学問の魅力をお伝えする授業体験イベントです。

入試イベントページでは、当日の授業時間割を公開しています。
興味のある分野、学科の授業を体験し、大学の学びの面白さにぜひ触れてみてください。

■“ 学び ”LIVE授業体験 日時
開催日:2017年3月28日(火)
時間:各キャンパス 10時より

「糖」は甘味料やエネルギーの源として知られていますが、細胞と細胞の間の接着現象などに大切な役割があることが分かってきました。私たち人間は多細胞生物です。細胞と細胞がどのように認識し合っているのかはとても大切なことです。
生体の中に存在する糖は何十種類もあり、それらがさまざまに連結することで、無限の種類の形のオリゴ糖や多糖といった「糖鎖」を作り出します。糖鎖は細胞膜上や糖タンパク質などいろいろな場所に存在しますが、そこでの糖の役割や機能はまだほとんど分かっていません。それでも、細胞同士の認識や接着に役立っていること、ガン細胞やインフルエンザウイルスの増殖に関与していることが分かっています。つまり、糖についてもっと解明していけば、将来的にガンの転移やインフルエンザ感染を予防する仕組みを構築することができるかもしれないのです。また、生体がなぜ糖を認識素子として利用するようになったのかも解明されていませんが、多くの科学者は糖鎖の集合体である糖クラスターに注目しており、それを証明するものとして免疫のメカニズムが挙げられます。
このように、糖は人間の体で非常に大切な役割を担っている分子でありながら、解明されていないことがたくさんあります。そのような未開の分野であるからこそ、面白い学問なのです。

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長谷川 輝明教授生命科学部 生命科学科 糖質材料創成学研究室

  • 専門:複合化学/生体関連化学、複合化学/高分子化学

歴史学とは、過去との対話・コミュニケーションです。「漢字はどのようにできているのか?」ということの理解を深め、徐々に歴史のオリジナルな資料に触れながら、過去との豊かなコミュニケーションに必要なスキルを身につけていきます。
江戸時代は庶民が大量に古文書記録を残した時代です。その背景には、兵農分離制度のもと、武士が農民を文書で支配し、武士の城下町集住による都市商業の発展によって商人が帳面をつけ始めたことで、庶民の間で読み・書き・算盤の学習熱が発達し、識字率が高くなったことがあります。そのため、多くの資料が活字で残されてはいません。
江戸時代の勉強には直接古文書を読んで学ぶ「古文書読み」が必要です。今回は、村のリーダーである名主の交代を代官所に認めてもらうために江戸幕府に送った「信濃国伊那郡福与村の名主交代一札」という比較的易しい文書を、一字ずつ解説しながら文字や書式の理解を深め、読み進めていきます。こうして古文書を読んでみると、武士によって一方的に農村が管理されるのではなく、民意を汲みながら管理されていた様子が見えてきます。このように過去とのコミュニケーションを通じて、その時代の状況を理解することで、古文書を読む楽しさが分かってくるでしょう。それが、歴史を考えるというステップの始まりなのです。

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白川部 達夫教授文学部 史学科

  • 専門:日本近世史

現在、温度、圧力、味覚といったさまざまなセンサーが開発され、それらのセンサーを複合化することによって、人間の感覚を表現するという研究が進んでいます。その「人間の感覚をいかにセンサーで表現するか」について講義します。
センサーの研究はガリレオが温度センサーを発明したのが始まりとされ、現在では「人間の五感の再現」をテーマに研究が進んでいます。視覚におけるCCD、聴覚におけるマイクやスピーカー、味覚にはバイオセンサーといった、優れたセンサーが開発されていますが、触覚、臭覚については開発できていません。特に臭覚にはきちんとした定義がないために再現が難しいとされています。そもそも人間は鋭いセンサーの塊です。センサーを統括している脳の信号処理も優れているうえに、人や状況によって感じ方が変化するような、センサーで表現できない感覚も持ち合わせています。今後、五感の再現には、より人間の五感を再現できるAIの開発や、温度、摩擦、圧力など、さまざまなセンサーが複合化して1つになったものや、分布測定が可能なセンサーなどが必要となるでしょう。

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相沢 宏明准教授理工学部 応用化学科 化学計測研究室

  • 専門:センサ工学、光ファイバを用いた計測システムおよびセンサ材料の研究

将来のエネルギー源として考えられている宇宙太陽発電衛星(SPS)というシステムについて、また、そのシステムの根幹となっている無線電力伝送技術について說明します。
これまで、電気を送るためには電線が必要でしたが、現在では、電波で電気を送る無線電力伝送技術が進んでいます。この技術において使用されているアンテナを「レクテナ」といい、レクテナが電波を電力に変換しています。この技術はすでに実用化されており、身近なところでは、自動改札機とICカードのシステムで使用されています。自動改札機から電波を送信し、それをICカード内部のアンテナが受信することによって発生する電流によって、カード情報を読み書きしています。さらに大きなシステムでこの無線電力伝送技術の使用を目指しているのが、宇宙太陽発電衛星(SPS)です。これは、衛生軌道上に太陽電池で発電する衛星を打ち上げ、ここから電波で電力を伝送し、地上のレクテナで受電するエネルギーシステムです。環境に負荷を与えずに、24時間発電することができます。このように、無線電力伝送技術の応用分野は、カードから宇宙まで大きく広がっているのです。

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藤野 義之教授理工学部 電気電子情報工学科 ワイヤレス伝送研究室

  • 専門:無線電力伝送技術、宇宙太陽発電技術、アンテナ工学、パーソナル衛星、通信技術の研究

所得のうち、貯蓄の占める割合が多いタイプを「アリ」、消費の割合が多いタイプを「キリギリス」に例えて、さまざまなアリとキリギリスの比率が存在する場合に、どのような経済が考えられるのかを講義していきます。
裕福かそうでないか、欲しいものがあるかないか、将来と今のどちらに重きをおくか。アリとキリギリスの比率が変化する原因はさまざまですが、そのなかには、政策的な原因があります。例えば、今まで実施されていた、将来を不確実にするような政策がある程度確実性のある形に収まる場合、キリギリスの比率が増えるでしょう。逆に、賃金が硬直的で失業が発生しているような状況の場合はアリの比率が増えるでしょう。これは、政策を変えることによってアリとキリギリスの比率を変えることができる可能性があるということであり、アリとキリギリスの比率が変わるということは、世の中の景気に影響を与える可能性があるということなのです。そして、比率が変わることによって財政政策や金融政策の効果が変わってくると言えるのです。
今までの標準的な経済学では、「すべての消費者が同じ性質を持つ=たった一人の消費者が存在する」と仮定した「代表的個人」を考える場合が多かったのですが、最近では、実際にはさまざまな経済主体が存在するということが重要なファクターなのであると議論されるようになってきているのです。

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松﨑 大介准教授経済学部 総合政策学科

  • 専門:財政学、公共経済学、地方財政論

スポーツはルールが厳密に決まっているため、コンピュータシミュレーションによる再現が容易となっています。そこで開発されたのが、コンピュータシミュレーションを応用したフリーキックサポートシステムです。今回は、情報学をスポーツに応用し、どうすればコンピュータシミュレーションでサッカーの直接フリーキックが入る確率が上がるのかを講義します。
フリーキックサポートシステムの最終的な目標はフリーキックが入る確率を上げるサポートをすることです。そのために、まずボールの硬さや弾みなどの「材料定数」や、空気抵抗・変化球の特性などの「空力係数」を、シミュレーションを用いて調べます。それらの結果を踏まえて、蹴り出されたボールの軌道をシミュレーションし、最後に、ニューラルネットワークという人工知能を用いて、ゴールのこの位置に入れるためにはどの方向にどのように蹴ればいいのか、誰が蹴れば入る確率が高くなるのかを瞬時に計算することで、フリーキックをサポートします。ただし、実際の試合ではルール上、情報機器を使用できないため、このシステムは理論的な練習やRoboCup(ロボットサッカー大会)で活用しています。このように、情報学はスポーツと相性が良く、スポーツの練習や戦略立案などに役立っています。

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中林 靖教授総合情報学部 総合情報学科

  • 専門:ネットワークコンピューティング、マルチメディアシミュレーション、計算力学

台湾人作家、鍾理和(ショウリワ)の人生を通して、彼の転機となる出来事(結婚)の中にある社会の本質を探ります。
移民の島である台湾の、人口比わずか1割強の少数派民族「客家」系の家庭に生まれた鍾理和は、父の農場経営に携わっていた時に鍾台妹(ショウタイメイ)という女性に出会うも、客家の「同姓不婚」の掟に触れて結婚が許されず、中国大陸に駆け落ちをします。戦後台湾に戻ってからも、掟を破った夫婦に対する村人たちの仕打ちが続き、さらには、息子も夭逝し、自身も結核を患うなど多くの困難が続きました。そうしたなかで生まれた作品の多くは、いずれも自身の人生、客家の民俗が色濃く映し出され、「同姓不婚」もまた彼の文学の大きなテーマの一つとなっています。
なぜ同姓結婚が許されなかったのか?その背景には「妻を娶るには、同姓を取らず」という儒教道徳の規範があります。そして、少数者移民ゆえの、同族間の団結とそれを保証する「掟」の強化があります。なおかつ、鍾理和が客家の中でも閉鎖的で同族意識が強い南部客家であることが追い討ちをかけたのです。
このように、鍾理和の結婚の背景には幾重もの障害があり、覚悟の結婚だったと言えるでしょう。

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野間 信幸教授文学部 東洋思想文化学科

  • 専門:中国近現代文学、台湾文学

この授業では、養護教諭(保健室の先生)を目指す学生のために、学校で行われる「健康診断」の測定方法について学びます。
健康診断は学校保健安全法によって、年に一度必ず児童生徒に行うことと定められているのですが、なぜ学校で健康診断をするのでしょうか?それは、診断によって病気が見つかったり、視力が良くなかった生徒に眼科の受診を勧めたりと、学校での健康管理という意味でとても大切な健康安全・体育的行事と位置付けられているからなのです。この教育的側面をより有効に機能させるためにも、養護教諭にはその意義や目的、各検診や検査項目についてしっかりと理解し、事前の指導を行うことが望まれます。
授業では定期健康診断の検査項目のうち、身長、体重、座高、視力、聴力を実際に測定しました。子どもたちの発育、発達を毎年確実に記録していくことに意義があるので、同じ手順で正確に測ることが重要です。身長測定では1人につき3回、違う人に測定してもらい、3回とも同じ数字になるのかを実際に経験することで、正確に測ることの難しさを学生たちに学んでもらいました。
養護教諭の資格は福祉系などの大学でも取得することができますが、ライフデザイン学部では、「健康」と「スポーツ」の両面から、子どもたちの健康を見ることができる養護教諭を育成しています。

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内山 有子准教授ライフデザイン学部 健康スポーツ学科

  • 専門:養護教育、学校保健、小児保健