月別アーカイブ: 2017年1月

世界120カ国に34,000店舗を展開しているマクドナルドがインドに1号店を出したのは1996年のことです。インド人の多くは、牛肉や豚肉を食べないヒンズー教徒とイスラム教徒です。またベジタリアンも多いため、商品開発はもちろん、調理場や調理人を、肉を扱う・扱わないで明確に分けるなどし、その国の実情に合うよう工夫しました。これは、「マーケティングミックス4P」の要素のProduct(商品)についての戦略です。Price(価格)についても、技術指導や品種改良を重ね、100%現地調達と低価格化で世界共通化を実現しました。ほかにも、Place(流通)では、自転車でのデリバリーサービス、Promotion(広告宣伝)では、家族団らんの場としてのアピールに力を入れるなど、それぞれに工夫をしています。
では、ここまでしてインドの市場でビジネスを展開するのはなぜでしょう。インドの人口は12.5億人と世界第二位で、その平均年齢も20代と若く、今後も人口増、収入増、都市化が予測されています。特に、顧客ターゲットである「都市部に住む中間所得者層」の大幅な人口増が見込まれることが大きな魅力です。さらに、消費における満足度を市場調査し統計学で分析した結果、満足・不満足について、「まあまあ」と答えた人々の多くが、それでも「また来店してもよい」と判断していることが大きな決め手となっているのです。こうした統計学は、無味乾燥な数学ではなく、こうして市場調査に生かされていることを学びましょう。

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長島 直樹准教授経営学部 マーケティング学科

  • 専門:サービスマーケティング、消費者行動・消費経済論

近年、スーパーコンピュータが、将棋や囲碁で人間に勝つなど、人間の能力に迫ってきています。ハードウエアの高速処理能力の進歩だけでなく、ソフトウエアである人工知能プログラムの進歩も著しく、このままいくと、2045年にはコンピュータの能力が、全人類の能力を超えると言われています。しかし、人間のあらゆるアイデアによって効率の良い指示(プログラミング)をしなければ、せっかく開発されたハードウエアの能力を充分に引き出すことはできません。スーパーコンピュータは、たくさん用意されたプロセッサ(プログラムの指示を実行するためのハードウエア)に対し、“1つの仕事を終えたら他の領域の仕事を供給しながら進めていく”という指示をプログラムすることで、どのプロセッサも常に効率的に動いている状態をつくることができます。また、2000年以上前に建てられたパンテオン神殿が、大地震で倒れないのかといった解析や、人が入っていけない原子炉内のウォークスルー、東日本大震災の実際の津波のデータと航空写真を使った、実写のようにわかりやすいシミュレーションなど、膨大な計算結果をただ示すだけでなく、実感を持てるようなコンテンツに活かされているのです。
進化するスーパーコンピュータですが、使用するのも利用するのも人間です。いかにうまく活用するかが重要なのです。プログラミングなどの技術的側面だけではなく、実際の社会での経験や知識を活かし、みなさんにはぜひ、スーパーコンピュータを利活用していただいきたいものです。

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塩谷 隆二教授総合情報学部 総合情報学科

  • 専門:計算力学、超並列計算による大規模シミュレーション

災害発生時などに、気象庁や気象台が発表する「防災気象情報」が、“一次情報”として個人でも入手可能になっている今、“二次情報”として自治体判断で出される「避難勧告」等の役割はあるのでしょうか。近年、自治体は「低頻度戦略」を取り、避難勧告等の発表に慎重になるあまり、重要な情報を見逃し被害が発生する事例が多発しています。一方、内閣府は、「避難勧告等は空振りを恐れず早めにたくさん出す」という「高頻度戦略」の基本方針を出しています。しかし、繰り返される空振りを人々は許容できるでしょうか。また、避難勧告等に鈍感になるなど、警告に対する信頼性の低下は防げるでしょうか。
そこで、避難勧告等の空振りと見逃しが避難行動の意思決定に及ぼす影響を、簡単な心理実験で検証した結果、避難勧告自体効果が薄く、むしろ逆効果だと言える状況であることが分かりました。それならば、低頻度か高頻度かといった議論ではなく、例えば「避難勧告」を「防災気象情報発表のお知らせ」「避難所開設のお知らせ」に名称変更するなど、避難勧告への待ちや依存からの脱却を促し、主体的な態度が必須となるような環境を作ってはどうでしょう。「地震予知は可能」ではなく「地震予知は困難」とする、「河川の氾濫は起こさせない」のではなく「氾濫を前提に対策を」など、技術的限界を含め、謙虚で正直な態度も必要です。こうした「避難勧告廃止論」や「行動指南型情報」から「状況通告型情報」への転換も、選択肢の1つとして考えてみる必要があるのではないかと思います。

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及川 康准教授理工学部 都市環境デザイン学科

  • 専門:災害社会工学、土木計画学