月別アーカイブ: 2016年5月

スーパーのお菓子売り場で「お菓子が欲しい」と泣き叫ぶ2歳くらいの子どもを、「泣かないの!」とどなりつけるお母さん。あるいは、電車の中でむずかる赤ちゃんをあやしながら、本人も泣き出しそうなお母さん。このように、周囲から「『子どもを泣き止ませることもできない』と思われている」という辛さを抱えているお母さんが目の前にいる時、あなたが保育者という立場だったらどうするでしょう。
実は、「どうしました?」というたった一声をかけられるだけで、お母さんたちは救われるといいます。
「子ども・子育て支援新制度」では、「地域の実情に応じた子育て支援の充実」があげられ、保育士、幼稚園・こども園の先生、といった保育者には、家庭や地域との連携を図りながら「園に通う子どもの保護者に対する支援とともに、地域の子育て家庭への支援を担うこと」「子育てをする人たちの気持ちに寄り添い、保護者とともに子育てをする姿勢を持つこと」といった役割が求められています。
みなさんには、こうした役割を担い、困っているお母さんに自然に声を掛けられるような保育者になってもらいたいと願っています。

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伊藤 美佳講師ライフデザイン学部 生活支援学科 子ども支援学専攻

  • 専門:幼児教育学、保育学、日常の保育の中での子育て支援

『グリム童話』はグリム兄弟によって編纂された伝承文学で、ドイツ語で書かれた作品です。グリム兄弟はドイツ的なものといにしえのものを探し求め、ゲルマンの古代の香りのするものを収集し、修復し、保存することを目的としました。そこには「過去へと遡及する指向性」が読み取れます。
『グリム童話』は、改編を重ねて第7版まで出版されています。「白雪姫」を例に取っても、白雪姫が目覚める場面の表現は違います。本当の『グリム童話』を知るにはまず、完訳を読むこと。そして、第何版であるのか、さらに版ごとの推移を確かめましょう。複数の翻訳者の翻訳を読み、原文のドイツ語で確かめるとよいでしょう。版を重ねるなかでは、子どもの教育の書にふさわしくない描写が削除され、そこには「未来への希求という指向性」も見られます。
研究の際には、グリム兄弟が伝承文学を神話研究、法研究、歴史研究、言語学研究、古代や中世の文学研究の一環としてとらえていたと知ることから始めるとよいと、私は考えます。そして、「テキスト」「グリム兄弟」「時代や文化」によりそうことが大切です。伝承文学にはいにしえの人々の生きざまが描かれています。深く読んでいくほどに次の謎が現れ、知れば知るほど、次の扉を開きたくなります。『グリム童話』とはいわば、知識の扉の集積なのです。

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大野 寿子教授文学部 国際文化コミュニケーション学科

  • 専門:ドイツ文学文化、伝承文学、文化人類学・民俗学

多民族、多言語、多宗教国家であるインドにおいて、ヒンドゥー教徒は人口の8割を占めますが、イスラーム教人口数でも世界第2位です。ヒンドゥー教は多元的な存在を認めるという信仰や、バクティと呼ばれる信愛の教義があり、他宗派に対してもとても寛容的です。また、13~18世紀にかけて北インドを支配したイスラーム政権は、ヒンドゥー教徒との融和策に積極的でした。こうしてさまざまなものが入り混じった文化が形成され、両者は共生していたといえるでしょう。
しかし18世紀になると、イギリスによる植民地の下、人々が団結して反抗することができないようにするため、宗教集団が細かく分けられるようになりました。これにより、20世紀になるとインド国内で宗教間の対立が起こります。1980年代になるとヒンドゥー教ナショナリストが台頭、1992年12月には約15万人の暴徒がモスクを完全に破壊するというアヨーディヤー事件が起きました。以後、モスクが隣接するヒンドゥー教の寺院は厳重警戒が敷かれ、聖地と呼ぶにはふさわしくない状況にあります。現在は対立が続いていますが、かつては共生できていた異なる宗教です。どうしたら共生できるのか、みなさんにも考えていただきたいと思います。

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橋本 泰元教授文学部 東洋思想文化学科

  • 専門:文学、各国文学・文学論・印度哲学・仏教学

自然科学の中の生理学とは、生命現象を機能の側面から研究する分野で、先生はその中でも循環生理学、環境生理学について研究しています。循環系は各臓器に酸素や栄養を供給する血液量の調節を行っており、必要なところに血液を供給します。血液が循環しないと臓器は機能しません。中でも脳は全てをコントロールする重要な臓器なので、適切に血液を分配しないとうまく機能しなくなってしまい、血流が足りず失神したり、脳梗塞を起こして言葉が出なかったり、手足が動かせなくなったりします。しかし、こうした症状を引き起こすメカニズムは明らかにされておらず、脳への血流量がどのように調節されているのかは分かっていません。そこで先生は、調節系、供給、脳の機能を結び付けて考える研究も行っています。同時に、脳機能そのものだけでなく、「代謝、脳血流、体循環調節、脳循環調節がリンクして脳の機能を維持している」と、総合的に考え、研究を進めています。

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小河 繁彦教授理工学部 生体医工学科

  • 専門:健康・スポーツ科学、応用健康科学、循環生理学

魅力的な中心市街地とはどういった街のことでしょう。交通が整い、仕事、学校、買い物などの用事がさっと済む「便利な街」は、人がたくさんいても長く過ごすこともなく、にぎわっているとは言えません。必需的な活動を効率的に行える便利さだけでなく、任意的な活動を促し、さまざまな目的を持った人たちが集まって時を過ごす、楽しくて人間的な、にぎわいのある街は魅力的な街だと言えます。こうしたまちづくりには、交通空間の計画が重要です。例えば駅前広場の整備によって、鉄道と、バスやタクシーなどを結び、効率的な交通処理を図るだけでなく、人がとどまって時を過ごし、にぎわいが生まれます。また、道路の歩行者空間整備によって、車と人がお互いを思いやり、上質なデザインの歩行者専用モールなどといった新たな価値を見い出す「価値創出型まちづくり」が求められています。
渋滞緩和などの「問題」は共有しやすくても、どんなまちづくりをしたいのか、創造すべき「価値」の共有は簡単ではありません。みなさんには、ぜひ自分のビジョンを語り、その実現をしていってほしいと思います。

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岡村 敏之教授国際学部 国際地域学科

  • 専門:土木工学/土木計画学・交通工学、土木工学/土木環境システム

身近にある問題を数理的に考察する「ゲーム理論」を使って、最も高い価格をつけた人が、二番目に高い金額を支払って商品を手に入れる、また、相手の入札価格が見えない封印入札型の「セカンドプライスオークション」について解説します。
入札者AとBがいて、1万、2万、3万、4万の中から金額を選んで入札します。
入札者Aの、商品の評価額が3万円のとき、Aはいくらで入札すれば、できるだけ少ない額で商品を手に入れることができるでしょう。例えば、Aが2万、Bが1万で入札した場合、高い金額を入札したAが商品を手に入れられ、1万円を支払うことになります。評価額が3万円でしたので、Aの利益は2万円です。
これを表にして考察していくと、Aは評価額である3万円で入札するのが一番損をしないということが分かりました。つまり、セカンドプライスオークションは、正直な商品価値を入札しておけば、相手がどんな価格で入札しても、損をすることはないオークションだといえます。
このように、簡単な数値例を使い、「ゲーム理論」によって、「セカンドプライスオークションでは、正直者は絶対に損をしない」ことを証明することができるのです。

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升田 猛准教授経済学部 経済学科

  • 専門:ゲーム理論

「経済」とは、生活に必要なモノやサービスを生産・消費する活動、仕組みのことです。
私たちの社会は、政治や文化などとともに、こうした「経済」によって構成されています。社会のさまざまな要素がどのように働いて経済が動いてきたかということを、過去から現在にかけて順を追って検討する学問が「経済史」です。
現代の経済には、過去の経済の動向が反映されています。経済理論は、こうした過去の経済現象の研究から発展しているので、経済史を学ぶことで、経済理論や現代経済への理解も深めることができます。
第二次世界大戦後の日本経済は、高度成長を実現しました。それは、旺盛な個人消費と企業の設備投資がもたらす、国内の需要主導の成長でした。さらにこの高度成長は、若い労働力の豊富な供給や政府によるインフラの整備、国内石炭から輸入石油へのエネルギー革命、欧米の最新技術の導入といったさまざまな要素に支えられていたのです。
経済を考えるには、「カネ」だけではなく、さまざまな側面にも目を配る必要があります。みなさんも広い視点を持って経済を勉強してください。

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島西 智輝教授経済学部 経済学科

  • 専門:エネルギーの生産・利用の歴史、オーラルヒストリーを活用した労働史

高齢化、グローバル化、情報化といった先の見えないなかで、どうすれば安心できる社会がつくれるのか。「ふつうの生活」を送ることができるための社会的枠組みである「福祉」の発展と、それぞれの国ごとの特徴を、北欧の事例を中心に見ていきます。
社会が少しずつ豊かになっていく過程で福祉制度も整備されていきますが、国によって内容はさまざまで、豊かさによって制度の度合いが上がるとも限りません。事実だけでは国による制度の違いを説明できないのです。
デンマークの社会学者エスピン・アンデルセンによる「福祉レジーム論」は、これを分かりやすく説明しています。米・英などの、市場の自由な経済活動を重視し貧困者への保障は薄い「自由主義」、仏・独・伊などの、血縁や家族を尊重し、元からある貧富の偏りをそのまま維持する「保守主義」、そして北欧の、国が中心となり、手厚く一定水準の生活を保障する「社会民主主義」に分けられます。
日本はこの3つの要素を全て持つと言われます。貧困や失業率、犯罪発生率の低さ、教育水準の高さからいえば、社会民主主義的な要素もあるのです。これからの日本が抱える、一人暮らし世帯の増加、非正規雇用や不安定な労働形態の増加、サービス産業の増加や情報化などといった「新しい社会的リスク」には、「社会民主主義」による個人単位の社会保障制度が効果的だといえるでしょう。

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藪長 千乃教授国際学部 国際地域学科

  • 専門:福祉政策